肉食か菜食かで食品生産による温暖化ガス排出量に大差ー米国の研究が菜食の勧め

 農業情報研究所(WAPIC)

06.4.28

  米国・シカゴ大学の研究者が、食品生産による温室効果ガスの排出量が、米国人が肉ベースの食事を採るか、植物ベースの食事を採るかで、SUVを運転するか、小型セダンを運転するかほどに違うことを明らかにした。研究者はもっと植物を食べるべきだと言う。この研究はEarth Interactions誌の最新号に発表された。

 Gidon Eshel and Pamela A. Martin, "Diet, Energy, and Global Warming",Earth Interactions: Vol. 10
 Abstract: http://ams.allenpress.com/amsonline/?request=get-abstract&doi=10.1175%2FEI167.1

 この研究は、植物からそれを食べる動物、そしてその捕食者への食物連鎖を通してのエネルギーの移動で、各段階ごとに生き残るエネルギーは10%にすぎないという数十年にわたって培われてきた生態学の考え方に基づく。つまり、人間が牛肉から100カロリーを摂取するには、牛は植物から1000カロリーを摂取せねばならず、この植物は太陽から1万カロリーを吸収せねばならないということだ。牛からではなく、植物から直接100カロリーを摂るとすれば、植物生産は10分の1で済む。

 このような仮説を立てた上で、米国農業や個人の移動により使われる化石燃料に関するデータと食品に関する統計データを集めた。

 食品生産は、農場の機械・設備を動かし、また植物を輸送し、加工するための化石燃料の燃焼で温室効果ガスを生み出す。研究者は、2002年の食品生産に利用された化石燃料は、利用された化石燃料すべての17%と計算した。これに牛や動物廃棄物から吐き出されるメタンをなどを加え、自動車利用と比べた。

 こすうることで、平均的な米国人の肉ベースの食事は、同じカロリーをもつ植物ベースの食事よりも、年・一人当たり1.6トン多い二酸化炭素を生み出すことが分かった。これは、シボレー・サバーバンとトヨタのカムリの運転で生み出される温室効果ガスの量の差に等しいという。

 菜食の勧めがまた加わった。

 しかし、米国人は植物ベースの食事に移行し、シボレー・サバーバンを乗り回すのを止めるだろうか。

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