農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

EU:欧州議会、「汚染者負担原則」指令を採択、工業・農業界が反発

農業情報研究所(WAPIC)

03.5.15

 5月14日、欧州議会が環境汚染に関する「汚染者負担原則」を支持する指令案を採択した(European Parliament:Stricter environmental liability rules needed)。この指令の下では、環境汚染を引き起こした事業者は回復のための全責任を負い、従来は多くが納税者により支払われてきたそのための費用を自ら支払うことができるように保険契約等を義務付けられる。この指令の対象には、生物多様性や渡り鳥の損傷までも含む極めて広範な環境損傷が含まれる。

 産業界は、想像を絶する評価とリスク管理に責任を負わされることになると、この指令には強く反対してきた。公的認可の対象となる事業や最先端技術を利用する場合や海運・核汚染は例外とすることも要請した。しかし、欧州議会はこのような修正は一切認めず、むしろ欧州委員会案を強化さえする形で採択した。イギリス工業連盟(CBI)は、ヨーロッパ製造業の「棺おけに最後の釘を打つ」ものと反発している。

 農業界も強く反発している。EU農業団体委員会(COPA)とEU農業協同委員会(COGEMA)は、コントロールがないか、既存の法令の制限内で使用された農薬・肥料・遺伝子組み換え作物などの投入で引き起こされた、あるいは不適切な認可手続のために引き起こされた環境損傷については、農業者は責任を負えないとする声明を出した(COPA and COGECA cannot accept that farmers will be held responsible for environmental damages beyond their control)。

 ただ、欧州議会の決定は最終的なものではない。来月には環境相理事会で討議され、その後の欧州議会の最終審議を通じて立法化される。この過程で修正はあり得る。最終的に採択されれば、2005年早期に実施に入ると予想される。

 関連情報
 EU:欧州委員会が環境被害予防・回復責任スキームを採択−汚染者負担原則の実現に向けて−(02.1.24)