農業情報研究所環境環境全般、自然、大気・水汚染等ニュース:2010年9月22日

ブラジル セラードの植生救済計画 農業拡大の脅威からサバンナを護る

  ブラジル政府が、世界の農業のフロンティアであり、もしわが国が海外農地を持つとすれば最有力候補地の一つでもある”セラード”の保護に乗り出す。

 アマゾン森林と沿岸地域に挟まれ、世界的にも稀有な植物・動物相を持つ灌木混じりのこの広大な(200万)サバンナは、首都・ブラジリアの建設が始まった半世紀前から人間活動―農業と都市化―に脅かされてきた。植生に覆われた面積は半減し、動物種は絶滅の危機に瀕している。保護されているのは25000㎢の国立公園と55000㎢のインディアン居留地だけである。

 法律は所有する土地の20%に原生植生を維持することを義務付けているが、これを無視して農地拡大が進められた。強力な政治力を持つ農業勢力は、環境省が森林破壊を後退させるためにアマゾンで取られた措置―違法に開拓した農業者に対する信用の差し止め―をここで適用するのを阻止することにも成功した。かつての(人間にとっての)不毛の地は、いまや、点在する都市の間に広大な農牧地が広がるブラジルの穀倉地帯に変貌した。ブラジルの大豆の59%、トウモロコシの26%、米の18%、コーヒーの48%、肉の70%がここで生産される。

 多くの研究が鳴らす警鐘に、ようやく政府が腰を上げた。今から2020年までにセラード破壊の速度を40%減らすことを目指し、そのために年に1億5000万ユーロを注ぎ込むという。計画には、伝統的と言われながらもますます犯罪的になっている慣行―南半球の冬の間に毎年自然を荒廃させる焼き畑―の根絶も含まれる。焼き畑は原則的には禁止されているが、非常な干ばつの今年の8月の出火件数は記録破りの14629件を数えた。4500人の消防士からなる消防隊を創設、これと闘う計画という。

 Brasilia lance un plan pour sauver la végétation du Cerrado, savane menacée par l'agriculture extensive,Le Monde,9.20
 http://www.lemonde.fr/planete/article/2010/09/20/brasilia-lance-un-plan-pour-sauver-la-vegetation-du-cerrado-savane-menacee-par-l-agriculture-extensive_1413517_3244.html 

 ブラジルは外国人による農地取得に禁止的規制を課したばかりでもある(ブラジル 外国人の土地購入制限を強化 外国企業・投資家によるランドグラブに歯止め?,10.8.26)。セラードは、もはや世界と日本の農業のフロンティアではあり得ないと考えられないだろうか。