バイオ燃料生産計画で巨大地主が土地取り上げーフィリピン・ネグロスで沸く非難

農業情報研究所(WAPIC)

07.10.9

 フィリピン農業省が先週木曜日、インドに本拠を置くエネルギー企業と国のバイオ燃料産業振興のための協定に関する覚え書きに調印したと発表した。新たな農業技術の普及、スウィート・ソルガムやキャッサバ、サトウキビなど他の原料作物の栽培とバイオエタノール生産への投資を通してバイオ燃料産業の発展を助ける。

 農業省は、原料栽培のための土地を見つけ出し、農民のスウィート・ソルガム、サトウキビ、キャッサバ、ヤトロファ[バイオディーゼル原料植物、手に負えない外来植物として広大な土地を占拠する恐れがある]栽培を奨励し、支援する。

 アロヨ大統領は昨年1月、外貨を持ち出し、汚染を生む石油の輸入を減らし、農民経済を助けるためにと、バイオ燃料法にサインした。この新法の下、農業省は今、原料作物栽培のための40万fの土地への民間投資家を物色中という。

 RP inks biofuels deal with India-based company,PNA,10.5

 勇ましいことだ。だが、こんな土地がどこから出てくるのか。ネグロス島では、政府の方針に同調、大規模なバイオ燃料生産プランを推進する前議員が、農民から土地を取り上げたと非難を浴びているという。当の前議員は、土地取り上げなどとんでもないコジツケだ言う。

 彼によると、2万4000fの土地のうちの各1万fをキャッサバとヤトロファのプランテーションに賃貸しし、残り4000fは農民の自由な作物選択に委ねている。ヤトロファ栽培地で働く者には十分の賃金も払っていると主張する。

 Ex-Negros Oriental solon accused of land grabbing,PNA,10.8

 どうやら、この前議員は、遅れに遅れる農地改革で土地の農民への配分をなお逃れている巨大地主らしい。”美しい”目標を掲げるバイオ燃料法、実は残存する巨大地主に格好の利殖の機会を与えるためのものであったかと思い当たる。

 バイオ燃料[断っておくが、あくまでも農作物を原料とする自動車燃料用のバイオ燃料の話である]が農民のためになったなど、世界のどこでも聞かない。

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