フィンランド企業 世界最大級のパームオイル・バイオディーゼル工場建設へ

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.1

  フィンランドの石油会社・Neste Oilが11月30日、パームオイルを主原料とし、同社が開発したNExBTL技術を使って、年間80万トンを生産する能力を持つ世界最大級のバイオディーゼル工場をシンガポールに建設すると発表した。来年前半に建設を開始、2010年末に完成の予定という。

 Neste Oil to build a NExBTL Renewable Diesel plant in Singapore,Neste Oil Corporation,07.11.30
 http://www.nesteoil.com/default.asp?path=1;41;540;1259;1261;7440;9494

 パームオイル粗油(CPO)先物相場が3000リンギに近づき、こんな事業が持続できるのかどうか疑問を禁じえない(マレーシア パームオイル高騰でバイオディーゼル産業はなお”森の中”,07.11.15)。 まして、原料となるパームオイルは、11月に合意され、来年第一四半期から利用が可能になると見込まれる”持続可能なパームオイルに関するラウンドテーブル”( RSPO)*の認証を受けたパームオイルを利用するというから、必要な量の原料がいつになったら確保できるのか見当もつかない。

 *Sustaining palm oil markets,Business Times,07.11.23
    http://www.btimes.com.my/Current_News/BTIMES/Monday/BizFocus/20071123020153/Article/

 RSPO認証の実行可能性や有効性は未確認だし、認証パームオイルが真に温暖化抑制に働くかどうかもわからない。同社は、そのバイオディーゼルが持続可能な方法で調達されるときに、ライフサイクルを通じての温室効果ガス排出量は通常のディーゼルより40-60%少ないというが、最近のオーストラリア科学機関=CSIROの研究によれば、1990年以前から存在したオイルパーム・プランテーション以外のプランテーションに由来するパームオイル、すなわち現在の大部分のパームオイルを原料とするバイオディーゼルのライフサイクルを通じての温室効果ガス排出量は、通常のディーゼルよりも大きく増えてしまう(バイオディーゼルで温暖化ガス減少 パームオイル原料では逆効果 豪研究機関.07.11.30)。

 それにもかかわらずのこの発表は、おそらく、マレーシアやインドネシアのパームオイル熱をさらに煽り、熱帯雨林、あるいは泥炭湿地の破壊を、従ってまた地球温暖化を加速することになるだろう(気候変動との戦い 新技術開発の代わりに熱帯林破壊防止がカギー雨林科学者団体,07.5.15)。

 国連開発計画(UNDP)の”Fighting climate change: Human solidarity in a divided world”と題する最新人間開発報告が、EUのパームオイル需要の増大(「1999年以来、EUのパームオイル需要は倍増し、450万トン、世界の総輸入の5分の1にまでなった」)で拡大する東南アジアにおけるオイルパーム栽培の拡大が、「広範に広がる森林破壊と先住民の人権侵害に結びついた」と警告した直後のこの発表は、バイオ燃料が企業の倫理も社会的責任も完全に吹き飛ばしてしまったことを、改めて確認させる。

 Human Development Report 2007/2008-Fighting climate change: Human solidarity in a divided world,UNDP,07.11.27
  http://hdr.undp.org/en/reports/global/hdr2007-2008/

 開発NGO・Oxfamの”Up in Smoke: Asia and the Pacific”と題する,最新報告(07.11.19)も、オイルパーム・プランテーションの急拡大がもたらした森林破壊のために、インドネシアは米国、中国に次ぐ世界第三の二酸化炭素排出国になったと指摘している。

 http://www.oxfam.org.uk/resources/policy/climate_change/downloads/asia_up_in_smoke.pdf