EU 米国バイオディーゼルの補助金・ダンピング調査を開始

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.14

 欧州委員会が6月13日、米国からのバイオディーゼル輸入に関する反補助金及び反ダンピング調査を開始すると発表した。EUの大部分のバイオディーゼル生産者の利益を代表する欧州バイオディーゼル・ボード(EBD)の訴えを受けたものである。EBDは、米国バイオディーゼル部門への補助金提供とヨーロッパ市場へのバイオディーゼルのダンピング輸出がヨーロッパのバイオディーゼル産業に悪影響を与えていると訴えた。

 欧州委員会によるEBDの訴えの審査によると、訴えは米国におけるバイオディーゼル部門への補助金提供の十分な証拠を提供している。これら補助金には、連邦物品(消費)税・所得税減免と生産能力拡大を助ける連邦補助金が含まれる。また、州レベルの様々な補助金もある。ダンピングに関しても、訴えはヨーロッパ市場へのバイオディーゼルのダンピング輸出の十分な証拠を提供している。

 訴えによると、この補助金提供とダンピングは、ヨーロッパ市場におけるバイオディーゼル価格下落と、EU産業の市場シェア低下を引き起こし、産業の全体的パフォーマンスと財政状況に重大な悪影響を及ぼしている。欧州委員会はこの主張の調査を始め、遅くとも09年3月13日までに暫定結論を出すという。

 なお、EU市場に輸入されるのバイオディーゼルはほとんどが米国からのものである。米国からの輸入は、05年の7000トンから07年の100万トンに急増しているということだ。

 EU launches investigation into US biodiesel imports,European Commission,6.13

 ただし、米国生産者は、ヨーロッパの生産者を苦境に追い込んでいるのは米国との競争ではなく、原料コストの上昇やEU諸国の政策だと主張している。今年のドイツにおけるバイオディーゼル減税措置の撤廃などの影響の方がずっと大きいと言う。

 EU probe begins into US biofuel subsidies,Financial Times,6.14,p.3
  EU probes US tax breaks for biofuels,FT.com,6.13
 European Commission opens probe into US biodiesel dumping: “The EU will not tolerate unfair trade practices”,Biofuels Digest,6.13

 欧州委員会が米国の補助金・ダンピングによる欧州産業の損害を認め、相殺関税・反ダンピング関税を課すことになれば、米国側は、不当な貿易障壁と批判しているEUのバイオ燃料基準をWTOに提訴する逆襲に出るかもしれない。エネルギー安全保障、気候変動抑制・・・バイオ燃料の理念とはまったく無縁な醜い争いが始まる。

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