地球の友 中南米バイオ燃料で新報告 「ラテンアメリカで破壊を煽る」

農業情報研究所(WAPIC)

08.9.12

 地球の友・インタナショナルが9月10日、中南米諸国におけるバイオ燃料(アグロ燃料、農産物を原料とするバイオ燃料の意味である)とその影響に関する新たな調査報告を発表した。

 http://www.foeeurope.org/agrofuels/fuellingdestruction/FOEI_FuellingDestruction_mr_FINAL.pdf

 ”ラテンアメリカで破壊を煽る”と題するこの報告は、調査したすべての国で、国内需要を満たし、さらにヨーロッパや米国への輸出需要を満たすためにアグロ燃料の生産が急増しており、原料作物栽培のための土地の増大が森林破壊や野生動物の破壊、土地紛争の増加、農村住民の追い払い、貧しい労働条件、環境汚染につながっていることを明かす。

 この報告は、欧州議会委員会における再生可能エネルギー 利用促進指令案の投票(欧州議会 EUの輸送用バイオ燃料利用目標切り下げ 持続可能性基準も強化へ)の一日前のタイミングで発表されたということだ。わが国農水省も、近々、「国際バイオ燃料基準検討会議」を開催するということだ(国際バイオ燃料基準検討会議の開催について)。委員たちは、是非ともこの報告を読んだ上で会議に出席して欲しい。バイオ燃料の問題は”食料との競合”だけでないことを、しっかり心に留めてもらいたい。

 報告が指摘する主要な問題は次のとおりである。

 ・ほとんどすべてのアグロ燃料の開発が、化学農薬・肥料・大量の水に高度に依存する広大な土地でのモノカルチャーにつながっている。これらのプランテーションは、他の農業活動をしばしば雨林やサバンナのような環境的な重要な地域に追い込み、森林破壊を拡大し、生物多様性を脅かしている。

 ・労働条件は非常に劣悪で、現代の奴隷制と言ってもよいほどだ。一部の国では児童労働も常態となっている。土地投機が地価を吊り上げ、アグロ燃料生産が地方住民の食料生産に取って代わりつつある。

 例えばアルゼンチン。今後3年でバイオディーゼル生産を400万トンに増やす。そのためには、現在の大豆栽培面積の60%に相当する新たな大豆畑が必要になる。この20年の大豆の拡大で食料自給農業や放牧に当てられる土地が25%、飼料作物用地は50%も減った。

 ・プランテーションのために農村コミュニティーが立ち退かされ、すべての国で土地所有権をめぐる紛争が増加している。大部分の開発は透明性、民主主義を欠く文化のなかで起きており、土地利用計画もなければ、暴力が使用され、あるいは準軍事組織がかかわることもある。[→コロンビア バイオ燃料が農民を追いたて 非正規軍の土地強奪で最悪の難民危機,07.6.8]

 ・企業と政治家の癒着で、税制、土地所有権、インフラなどに関するアグリビジネスに大変魅力的な政策が導入された。汚職・腐敗がはびこり、土地所有者や生産者の違法活動が見逃されている。

 ・儲かっているのは商品、農業資材の販売増加や、土地投機で利益を上げる大規模生産者、取引業者、投資家だけである。すべての国で多国籍企業の参入が増えている。