破綻に瀕するインドのヤトロファディーゼル計画 ”灌漑なし・荒蕪地でも育つ”の虚妄が明らかに

農業情報研究所(WAPIC)

10.4.29

 インドのヤトロファディーゼル計画が瀕死の状態にある。インド政府は、現在の小麦栽培面積を超える40万㎢(4000万ヘクタール)でヤトロファを栽培、2017年までにインドのディーゼル消費の5分の1をヤトロファディーゼルに置き換えられると踏んでいる。国営石油会社(インド石油=IOC、バーラト石油=BPCL、ヒンドゥスターン石油=HPCL)から大中小の民間企業まで、多くの企業がヤトロファ栽培とヤトロファディーゼル生産に向けて巨額の投資を行ってきた。

 しかし、いざ始めてみると、ヤトロファは荒蕪地で灌漑なしで栽培できるといった前宣伝がまったくの間違いであることが分かった。チャッティスガル州再生可能エネルギーエージェンシー(CREDA)のアナリストのPreeti Kaurは、ヤトロファの40−45年の生涯のうち、少なくとも植えてから3年は十分な世話が必要で、多少の灌漑も必要だと言う。。ヤトロファ栽培がうまくいかないから巨額の投資が無駄になる。企業は、折角の投資が無に帰さないように、いまや高い品質の干ばつ耐性ヤトロファ種子の研究開発に金を注ぎ込んでいる有様だ。

 IOCは、3万ヘクタールを超える荒蕪地にヤトロファを植えて年3万トンのヤトロファディーゼルを生産すべく、チャッティスガル州政府と合弁企業を作った。ところが、ヤトロファが植えられたのはまだ626ヘクタ―ルにすぎない。マディヤプラデシュ州政府も2000ヘクタールの荒蕪地を提供したが、IOCは2009年に241ヘクタールを取得したにとどまる。ラージャスターン州政府は2万ヘクタールの劣化林地にヤトロファを植えるように要請したが、IOCはフィージビリティ調査を行っている段階だ。

 2020年までに100万トン(うち60万トンはヤトロファディーゼル)を生産、インド最大のバイオディーゼル生産者になることを計画しているRuchi Soya Industriesも、なおフィージビリティ報告の準備中という。

 森林住民・労働者ナショナルフォーラムのSouparna Lahiriは、研究開発に投資し、農民と緊密に協同し、3年間の懐胎期間の間彼らの生計を支えるときにのみ、会社は成功する、さもなければ投資はすべて無に帰すだろうと言っているそうである。

 Govt's biofuel dream fails to take off,Business Standard,10.4.27
 http://www.business-standard.com/india/news/govt/s-biofuel-dream-fails-to-take-off/393063/

 バイオディーゼル大量生産のためのヤトロファ大規模栽培には、専門家や国際機関(FAO)は早くから警鐘を鳴らしていた(中国・インドのバイオ燃料生産 食料作物栽培のための水の不足を深刻化 国際水管理研究所,07.10.13翻訳:ヤトロファ “ミラクル”な作物(FAO食料農業白書2008より),09.10.30。しかし、多くの国の政府や企業は耳を貸さなかった。後悔してもう遅い。農村経済を破綻に追い込まない責任の取り方を考えるべきときだろう。