農業情報研究所環境エネルギーニュース:2011年1月22日

ジャトロファは”ミラクル”なバイオ燃料作物ではない 先導的企業も認める

 乾燥に強く、肥料も要らず、農耕に不適な痩せた荒地(限界地)でも育ち、十分な収量があり、従って食料と競合すことなく大量のバイオディーゼルを供給し、貧しい途上国農民に収入と雇用をもたらす”ミラクル”な バイオ燃料植物、ヤトロファ(ジャトロファ)(→翻訳:ヤトロファ “ミラクル”な作物,09.10.30)への期待が急速にしぼみ始めたようだ。アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどで広大なヤトロファ栽培地を取得することでヤトロファ・ディーゼルビジネスの先陣を切ってきた イギリス企業も、ヤトロファへの期待が過誤だったことを、遂に認めざるを得なくなったという。

  地球の友・ヨーロッパが1月21日、このように”ミラクル”と喧伝されてきたヤロロファは収益性も持続可能性もないという新たなリポートを発表した。

 http://www.foeeurope.org/press/2011/Jan20_REPORT_money_doesnt_grow_on_trees.html

 ロイター通信によると、アジアやアフリカで栽培するヤトロファを加工しているイギリス企業・D1Oilのビジネス開発マネージャーも、このリポートの主張に同意する。彼は、「ヤトロファは、多くの人々が考えるようなミラクルな作物ではない」と言っている。

 また、タンザニアとモザンビークでヤトロファを栽培するイギリスのSun Biofuelsのビジネス開発部長は、「限界地 でも育つが、限界地では収量が上がらない」と言う。Sun Biofuelsの推定では、そのモザンビークのプランテーションでは1クタールのヤトロファは2トンの油を生み出すかもしれないが、ここのヤトロファは、かつてはタバコ畑だった肥沃な土地で、肥料と農薬を使って育てられている。

 先のD1Oilのマネージャーは、「作物化のこのような段階で収益を保証するのは不適切だ。この作物については、学ぶべきことがまだ山ほどある」と言っている、ということだ。

 Biofuel jatropha falls from wonder-crop pedestal,Reuters,1.21
 http://www.reuters.com/article/idUSTRE70K4VU20110121

 なお、ランドグラブに関する筆者の情報リスト(界土地投資(収奪)関連情報:文献リスト)に基づいて推計すると、欧米・中国・その他の国の企業がアフリカ(コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マラウィ、マリ、モザンビーク、セネガル、タンザニア、ザンビア)で取得したヤトロファ栽培用地の総面積は、明確に分かっている分だけでも367.5万へクタールになる。ヤトロファとサトウキビなどと報じられたいる面積も含めると、これに91万ヘクタールが付け加わる。これらのプロジェクトが破綻の経済的・社会的影響が懸念される。その他のバイオ燃料関係プロジェクトでは、パームオイルが148万〜448万ヘクタール、サトウキビが102万ヘクタールである。