農業情報研究所環境エネルギーニュース:2013年8月7日

米EPA バイオ燃料の義務的使用目標を初めて切り下げへ 市場に柔軟に対応と

 米国環境保護庁(USEPA)が8月6日、2014年再生可能燃料基準(RFS)を減らすと発表した。

 RFSとは、2007年エネルギー独立安全保障法(EISA)が年々定めるように求めている再生可能燃料の義務的使用目標のことである。法が定める2022年の360億ガロンという目標に向けて毎年増やされてきた。ところが、2014年については、市場の情況に応じて柔軟に対応、これを初めて減らすというのである。

 市場の情況とは、エタノール使用量が「ブレンド・ウォール」にぶつかって全く増えなくなっていることを指す。米国では、エタノールは、ほとんど専ら、これをガソリンに10%添加した”E10”燃料の形で使われている。EPAは15%(E15)までの添加を認めているが、自動車業界はエンジン損傷を恐れ、損害賠償を恐れる燃料業界もE10しか売らない。従って、エタノール使用量は、最大でも停滞・減少傾向が続くガソリンの10%にしかならない。米国のエタノール使用量は、既に2010年にこの「ブレンド・ウォール」に突き当たっていた。

 それもかかわらず、EPAはRFSを年々増やし続け、2013年には1330億ガロンというガソリンの推定総使用量に対し、トウモロコシエタノールだけでも138億ガロン、バイオディーゼル、先進的バイオ燃料(トウモロコシ由来のエタノール以外のバイオ燃料)、セルロースバイオ燃料を合わせると165億5000万ガロンの目標を掲げたのである(米国EPA 2013年再生可能燃料基準を提案 バイオ燃料vs食料の対立に拍車,13.2.5)。

 当然ながら、石油業界はこんな量はこなせない。バイオ燃料製造者に与えられる「再生可能識別番号」(RIN)の購入という代替手段(クレジット)でこの差を埋めに走る。競ってのRIN購入でその価格は暴騰、それによる損害をガソリン価格引き上げで埋めようとする挙にも出た(北林 バイオ燃料をめぐる国際動向:2012年)。こうした情況に、EPAもついに折れたということのようだ。EPAは、2013年のRFSを満たす期限も4ヵ月延長、2014年6月30日にするという。

 EPA Finalizes 2013 Renewable Fuel Standards to Help Promote American Energy Independence, Reduce,EPA,13.8.6

 これを機に、RIN価格も急転直下、下落に転じたという。

 US biofuel mandate change hits Rin prices,FT.com,8.7

 バイオ燃料狂いのオバマ政府もようやく正気に戻るらしい。日本では、安倍総理の原発狂いは収まりそうにないが(被爆者側「原発廃止を」 首相、推進を強調)。