農業情報研究所環境エネルギーニュース:2013年10月18日

EU 食料作物由来バイオ燃料制限の実施を無期限延期 実施には動かざる「科学的証拠」が必要と

 EUが食料作物から作るバイオ燃料の利用に上限を設ける計画*実施の延期に追い込まれた。欧州議会環境委員会が16日、これを実施するための法文作成を開始することにゴーサインを出せなかった。法文作成は2015年より前には始まらないだろう。来年は欧州議会選挙があり、新たな委員(大臣)の指名もある。延期は長期にわたりそうだという。

  *EU 食料作物由来バイオ燃料は輸送用燃料の6%までに 欧州議会が最終決定,13.9.12

 欧州バイオディーゼル委員会(EBB)を含む農業・バイオ燃料団体の強力な圧力団体が議員を動かしたようだ。これら団体は、議員に送った書簡で、「現在の法的枠組みをいかなる変更も堅固で検証可能な科学的証拠を必要とする」と述べているという。

 EU lawmakers freeze plan to cap food for fuel,Reuters,13.10.18

 欧州委員会や先の欧州議会の決定は、2008年の「EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準」で間接的土地利用変化の温室効果ガス排出等への影響の研究を定めて以来集められてきた「科学的証拠」に基づくものであったはずだ。「予防原則」もEUの専売特許ではなかったか。それがいまさら何を?。これがさまざまな経済・社会当事者の利害に動かされやすい政治ということなのか。

 これにより、農業とバイオ燃料産業は一息吹き返すだろう。しかし、ライフサイクル温室効果ガス排出がより少なく、確かに気候変動抑制に貢献する廃棄物等を原料とする第二世代バイオ燃料の開発と生産は勢いを削がれる。今は小康を得ている世界食料価格も上昇に向かうだろう。EUは、環境保護でも食料問題解決に向けての努力でも世界のリーダーの地位から滑り落ちることになる。