農業情報研究所環境エネルギーニュース:2014年4月17日

政府 シェールガス権益確保で日米協力 ガス掘削によるラジウム放射能汚染など何のその

 「政府は15日、首相官邸で「経協インフラ戦略会議」を開き、米国産シェールガスの権益確保やワシントン−ボルティモア間での超電導リニア新幹線の導入実現など、米国との経済協力拡大に取り組む方針を確認した。安倍晋三首相は24日のオバマ大統領との会談で前進を図りたい考えだ。

 菅義偉官房長官は会合で「北米は安全保障に加え、経済面でも最も重要なパートナーだ。近年はシェールガスの開発に伴い、エネルギー資源の観点からも極めて重要になっている」と強調した」とのことである。

 経協戦略会議:シェールガス、リニア新幹線などで米と協力 毎日新聞 14.4.15

 リニア中央新幹線計画に対しては、環境影響に関してすべての通過県がさまざまな懸念を表明、地元住民の反対の声もい(今日の注目記事:公害・開発と環境)。実際、南アルプスの地下を穿つなど、山の神の逆鱗に触れるのは間違いない。想像するだに恐ろしい。しかし、事故の原因も収束の方法さえ分からないのに、世界一安全として世界に原発を売り込む安倍首相にしてみれば、そんなことは一向に気にならないのだろう。地方紙に満載のこれらの情報も、中央紙やテレビは全く報じないから、東京都民が知ることもなく、反原発のような大きな流れは生まれようもない。首相は安心して「経済だ!」、「経済だ!」と言っていられる。都民も、ええじゃないか、ええじゃないか、経済、経済、アべノミックス、アベノミックス、よい、よい、よい!だ。

 シェールガスについても同様だ。シェールガス採掘のための地底岩盤の水圧破砕がメタン(強力な温室効果ガス)放出につながる恐れについては既に知られている(世界のシェールガスブームのなか 開発禁止を維持とフランス環境・エネルギー相)。オバマ政府も、水圧破砕ガス採掘によるメタン放出規制の強化に乗り出さしたほどだ。

 White House Unveils Plans to Cut Methane Emissions,The New York Times,14.3.29
 White House targets methane gas emissions,The Washington Post,14.3.29
 US seeks to curb methane from shale boom,FT.com,14.3.29 

 しかし、経済狂いの安倍首相の目にも耳にもとまらない。経済界も、安価なエネルギー、ええじゃないか、ええじゃないか、よい、よい、よい!だ。シェールガス採掘の環境影響に関する最新の懸念事項は、行き場のない低レベル放射性廃棄物―ラジウムの堆積だ。首相は、低線量被ばくの健康影響はないのだからそんことは恐れるに足りないと、これも意に介さないだろう。しかし、それでアメリカ国民を説得できるかどうか、これは別問題だ。

 ともあれ、アメリカでは今、水圧破砕に使われる水が地上に運び上げるラジウムに汚染された放射性廃棄物が、まるで福島第一原発事故で放出されたセシウムを含む放射性廃棄物が行き場もなく溜まっているように、シェールガスブームで加速的に溜まり続けている。それが、廃棄物が埋められる掘削サイト周辺だけでなく、もっと広い範囲の地域の住民の放射線被ばくへの懸念を高めているのである。

 水圧破砕は、井戸を通してラジウムを帯びた地下水を地上に運び上げ、土壌や地上施設を汚染する。放射性物質はタンクの底のスラッジ、パイプラインの湯垢などに集積する。

 こうして溜まる放射性廃棄物の統一的処分ルールはない。掘削サイトに埋めるところもあれば、どこかへ運び出すところもある。一部は、最終的には道路脇の排水溝やら、ごみ箱やら、ごみ埋め立て場に行きつく。ノースダコタ当局は、井戸からの廃水を濾過すのに使った大量の「フィルターソックス」がカナダ国境近くの町の廃ビルに捨てられているのを発見した。

  Radioactive Waste Booms With Fracking as New Rules Mulled,Bloomberg,14.4.17

 こうして、放射性廃棄物は、掘削サイトに溜まるだけでなく、周辺地域に拡散し続ける。日本の除染廃棄物、ゴミ・水処理施設から出る廃棄物、農林産物廃棄物以上に始末におえない。シェールガス採掘が続くかぎり、放射性物質は環境中に蓄積、環境放射能レベルは上がり続けるだろう。

 日本のお陰で健康を害した。将来、そんな訴えも出てくるかもしれない。