ドイツ家禽農場でH5N1鳥インフルエンザ 野鳥重視の伝播防止策に一層の疑念

 農業情報研究所(WAPIC)

06.4.6

 ドイツ・サクソニィ・バーンスドルフの家禽農場で高病原性H5N1鳥インフルエンザの勃発が確認された。欧州委員会の発表によると、この農場は8000の七面鳥、5000のガチョウ、3300の雌鶏で構成される。H5N1ウィルスの存在は、国家基準試験所が5日に確認した。しかし、H5N1ウィルスのアジア株かどうかは未だ不明で、この確認のためにサンプルが英国・ウエイブリッジのEU基準試験所に送られるという。

 Highly pathogenic H5N1 avian influenza confirmed on poultry farm in Germany: German authorities applying EU control measures,4.5

  (関連ニュース)
 Bird Flu Confirmed in Saxon Poultry,DW-world,4.5
 http://www.dw-world.de/dw/article/0,2144,1955571,00.html

 ドイツでは、これまでに7つの州のおよそ200羽の野鳥にH5N1ウィルスが発見されているが、家禽の感染が確認されたのはこれが初めてだ。2月にフランス・アン県の農場で七面鳥のH5N1鳥インフルエンザ感染が確認されている。3月にはスウェーデンの家禽の感染の疑いが報告された。EU以外のヨーロッパではルーマニアとアルバニアで確認されている。

 ドイツの家禽の感染源はこれから調査されることになるが、多くのEU諸国は野鳥からの感染を最も恐れてきた。野鳥との接触を絶つために、ドイツも家禽の屋外飼育を禁止ししている。しかし、サクソニィではこれまでに野鳥のH5N1ウィルス感染は発見されていない。野鳥からの感染防止に重点を置くこのような家禽のH5N1鳥インフルエンザ勃発防止策の有効性への疑念が高まる。

 スイスも野鳥からの感染を恐れて家禽の屋外飼育を禁止しているが、動物保護団体は家禽が野鳥から感染する可能性は小さい、家禽の鳥インフルエンザは、むしろグローバルな家禽産業の交易ルートを通じて伝播する可能性の方が高いと、この交易ルートの一層厳格なコントロールを要求いている。

 この団体の報告によると、渡り鳥は特に南北の軸に沿って移動するのに、鳥インフルエンザは、基本的には東西の軸に沿って世界的に広がった。その上、H5N1に感染した鳥が非常に離れた場所まで病気を運ぶことはできないから、野鳥は飛来した後に地域で感染した可能性が高い。

 逆に、飛行機、列車、トラックは、毎日大量の雛や若鶏を大陸に運び、家禽の排泄物や屑肉は肥料や家禽の飼料としてリサイクルされている。さらに、フランス、イスラエル (1)、パキスタン(2)、ナイジェリア(3)、ビルマ(4)で発見されたH5N1鳥インフルエンザは、渡り鳥からの感染があり得ない密閉された養鶏場で勃発したと強調する。

 Kagfreiland demande à Berne de lever le confinement des volailles,edicom,4.5
 http://www.edicom.ch/fr/news/suisse/index.php?idIndex=278&idContent=961269

 このような事例に、さらにサクソニィにおける家禽のH5N1鳥インフルエンザ勃発の事例が追加されることになる。

  なお、野鳥のH5N1鳥インフルエンザは既に多くの大陸ヨーロッパ諸国で確認されているが、5日には英国・スコットランドの死んだ白鳥の高病原性H5鳥インフルエンザが確認された。現在、H5N1かどうかを確かめているという。

 DEFRA:Avian flu tests on dead wild bird in Scotland(4.5)
 http://www.defra.gov.uk/news/2006/060405c.htm

 注(WAPIC)

(1)3月18日確認。二つの農場で1万1000羽の七面鳥と鶏が死んだ。

(2)3月21日確認。二つの農場で勃発。鶏2万5000羽を処分。

(3)2月8日に最初の勃発。渡り鳥の溜り場から遠く離れ、孵化用卵を輸入する閣僚所有の一つの工場養鶏場から始まった。

(4)3月13日、国連食糧農業機関が発見したと発表。翌14日、国家メディアが5000羽を処分したと報告。

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