英国でH5N1鳥インフルエンザ勃発 土着野鳥へのウィルス拡散の恐れありと専門家

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.4

 英国当局と欧州委員会が3日、英国・サフォークの七面鳥農場でH5N1鳥インフルエンザの勃発が確認されたと発表した。この農場は、脂肪が少なく・健康的な七面鳥を育てることを売りにするヨーロッパ最大の七面鳥企業・バーナード・マシューズ社の農場で、およそ16万羽の七面鳥を飼っている。ウィルスがアジア株であるかどうかは、なお検査が進行中という。

 European Commission;Avian Influenza: H5N1 virus confirmed in UK,07.2.3
  DEFRA;H5N1 avian influenza (Asian strain) in poultry, Suffolk,,07.2.3

  ヨーロッパではハンガリーでも1月にH5N1鳥インフルエンザ勃発が確認されており、英国でもH5N1ウィルスの発見は初めてのことではない。従って、特別の注意を払う必要はないのかもしれない。しかし、気になるのは、今、何故、英国で勃発なのかということだ。この型のウィルスは、一般的には渡り鳥が運んでくるとされ、最近の韓国や日本での勃発の感染源も、決定的証拠はないものの[とりわけ不思議なのは、昨年は大量の渡り鳥の死が世界各地で確認されたのに、今年はそのような報告はほとんどないことだ]、渡り鳥だろうという専門家の見方がマスコミを通して流されている。しかし、英国では、今は冬の真っ最中、少なくとも大量の渡り鳥がやってくる時期ではない。

 New Scinetist誌やGuardian紙によると、英国の動物衛生研究所(Institute of Animal Health)の鳥インフルエンザ専門家・コーリン・バター氏は、これが春のことなら予想の範囲内だが、今は真冬で大量の渡りがある時期ではないから少々驚きだ、これが唯一の勃発なのか、それともまだ発見されていない別の勃発から広がったものなのかどうかを見極めるのは決定的に重要だと言う。後者の場合には、英国に土着の野鳥に病気が大きく広がっている恐れがあり、ウィルス撲滅は難しさを増すことになる。

 H5N1 bird flu outbreak confirmed on English farm,NewScientist.com,2.3
 World braced for surge in bird flu,The Guardian,2.4

  実際、昨年、スコットランドのファイフ地域で白鳥のH5N1鳥インフルエンザ死が確認されたのは4月のことだった。それでも、オランダ・エラスムス大学の鳥インフルエンザ専門家であるAlbert Osterhaus教授は、 カモが北海を越えてウィルスを運び、水路にウィルスを排出した、今やファイフ地域、さらにはこの地域を超えて、他の野鳥(やその他の動物)の間に広がっているだろうと警告していた(英国の白鳥 H5N1と確認 環境食料省 全国規模の家禽屋内閉じ込めは過剰反応,06,4.7)。この懸念は、後にこの白鳥がコブハクチョウではなく、オオハクチョウであると判明したことから、取りあえず薄らいだが(英国 白鳥のH5N1感染は孤発例と示唆 だが、感染見逃しの指摘もある,06.4.12)、今回の勃発は、ウィルスが既に土着しているのではないかという疑いを改めて高める。

 英国当局は、「まだ発見されていない別の勃発から広がったものなのかどうか」、どこまで調査を進めるのだろうか。はっきりした答えが出るまで、英国内だけでなく、貿易を通じてウィルスが運び込まれる可能性のある諸外国の養鶏業界も枕を高くはできないだろう。