英国 白鳥のH5N1感染は孤発例と示唆 だが、感染見逃しの指摘もある

 

農業情報研究所(WAPIC)

 

06.4.7

 

  英国環境食料農村省(DEFRA)が11日、スコットランドで46日にH5N1鳥インフルエンザが確認された白鳥は、DNA検査の結果、これまで信じられていたコブハクチョウではなく、オオハクチョウであると判明したと発表した。

 

  Statement by the UK CVOs on the swan DNA result,4.11
http://www.defra.gov.uk/news/2006/060411a.htm

 

このことから、白鳥は英国の外で感染し、英国にやってきたものと考えられるという。オオハクチョウには、アイスランドから来るものと、スカンジナビアやロシア北部から来るものがある。これらは英国と大陸ヨーロッパの一部で越冬する。過去数ヵ月、多数のこれら白鳥を検査してきたが、すべては陰性だった。

 

これは、この白鳥の感染は孤発的な例であることを示唆する。ガーディアン紙によると、専門家は、このケースが1回限りのものであることを示唆するからと、それが土着のものでなかったというニュースを歓迎している。この白鳥が死んで以来、陽性の鳥はまったく発見されていない。また、この仮説は、コブハクチョウと違い、オオハクチョウは、通常は感染した白鳥が見つかったような港周辺に現れることはなく、淡水湿地を目指すことからも支持される。この白鳥は途中で疲労を感じで休息、そこで死んで発見場所に打ち上げられたのだろうという。

 

  Swan had virus before arrival, tests suggest,Guardian,4.12
  http://www.guardian.co.uk/science/story/0,,1751975,00.html

 

日本は原種鶏・種鶏の大部分を輸入に頼る。生きた鶏の最大の輸入先が英国だ(37.4%−2005年)。従って、このニュースは日本の養鶏業界にとっても歓迎すべきものかもしれない。

 

ただし、英国の鳥インフルエンザ検査は感染を見逃している可能性があるという指摘がある。低病原性鳥インフルエンザウィルスは鳥の間で普通に見られ、国際的経験は、鳥の6%から7%が検査で(低病原性鳥インフルエンザ)陽性となることを示している。しかるに、英国で昨年12月に収集された3343のサンプルで陽性となったのは2ケースー0.06%ーにすぎなかった。これはサンプル採取方法に問題があるからではないかという。

 

糞便のサンプルを取るために殺菌されたスワブが使われ、冷蔵庫に保存されている。しかし、科学者は、スワブは塩水に浸され、そのあとで冷凍されるべきだ、スワブがこのように冷蔵庫に放置されれば、干乾び、すべてのウィルスを失うことになると言う。

 

  UK's bird tests may be missing flu virus,New Scientist,06.4.15
    http://www.newscientist.com/channel/health/bird-flu/mg19025473.600-uks-bird-tests-may-be-missing-flu-virus.html

 

  このニュースで安心というわけにはいきそうもない。世界におけるH5N1鳥インフルエンザの最近の大規模勃発の多くが、野鳥というより、雛の貿易を通してのものではないかという見方がある(ドイツ家禽農場でH5N1鳥インフルエンザ 野鳥重視の伝播防止策に一層の疑念,06.4.6鳥インフルエンザ危機の根源は工業養鶏、野鳥や庭先養鶏ではないーカナダNGOの新研究,06.2.27)。それによってしか存立できない工業養鶏に安心はない。

 

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