FAO 世界中、どこでも家禽が新型インフルエンザにかかる可能性 適正農業慣行を守れ

農業情報研究所(WAPIC)

09.8.29

  国連食糧農業機関(FAO)が27日、チリの七面鳥のH1N1ウィルスの発見は(チリ 七面鳥が新型A/H1N1インフルエンザに感染 ウィルスに重大な変異の兆候はなし,09.8.22)、世界中、どこの養禽場も、現在人間の間で流行しているパンデミック・インフルエンザウィルス(H1N1)に感染する可能性があるという懸念を掻き立てると発表した。

 七面鳥のウィルスの発見自体は人間の健康への直接の脅威となるものではなく、七面鳥の肉は獣医の検査など一定に手続きを経て一般に販売することができる。このウィルスは移りやすいが、通常の季節性インフルエンザ以上に致死的ではない。しかし、理論的には、はるかに致死的だが人の間では移りにくい鳥のH5N1と結合することで、ずっと危険なウィルスの変わる可能性がある。

 幸いにもチリにはH5N1ウィルスは存在しない。しかし、家禽に大量のH5N1ウィルスが見られる東南アジアでは、人々の間でのH1N1インフルエンザの流行は、この心配を一層大きなものにする。従って、FAOは、動物の健康の監視を改善し、動物が病気ならば労働者を保護し・病気の労働者を動物に近づけないことを含む衛生的で適正な農業慣行のガイドラインに従うように勧告すると言う。

 チリは、豚が感染したカナダ、アルゼンチン、オーストラリアに次ぎ、インフルエンザ様の症状を示す農場労働者のH1N1ウィルスが動物に移った可能性を調査している4番目の国となった。

 今までのところ、豚や七面鳥の症状は軽いが、養豚場や養禽場にパンデミックH1N1ウィルスが定着すれば、貿易制限などの経済的悪影響や肉製品の品質・安全性の間違った受け止め方が生じ得ることにも心せよと言う。

 H1N1 flu in turkeys may spread,FAO,8.27
 http://www.fao.org/news/story/en/item/29532/icode/

 人の間での大流行が間近に予想されている日本の政府や養豚・養鶏関係者は、人から動物へのH1N1感染の問題をどう考え、どう対処しようとしているのだろうか。農水省が動いた気配はない。豚や鶏が感染したときの混乱ぶりが目に見える。みんな責任のなすりあいだ。

 関連情報
 
カナダ・アルバータ 豚が人からH1N1インフルエンザに感染 ウィルス変異のリスク,09.5.5