欧州委員会、違法伐採と違法伐採木材貿易と闘う包括的措置を採択

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.22

 欧州委員会は20日、関係途上国政府から毎年100−150億ユーロ(約1兆3500億−2兆250億円)の収入を奪うと推定される違法伐採の跋扈と違法伐採木材貿易と闘うための一連の包括的措置を採択した。措置の中心的要素は、@木材部門統治の改革を支援・促進するための違法伐採が激しい木材生産国との自主的連携協定、Aこれらの国からの合法木材だけがEUに輸入されるように保証するための連携国との法的拘束力のあるライセンス計画を立ち上げる規則からなる。欧州委員会は、これらの措置は、途上国における「グッド・ガバナンス(良い統治)」の推進をEU域内市場が提供する合法的手段と影響力に結びつける革新的アプローチに基づくものと言う。

 欧州委員会は昨年5月、同様な目的を持つ「森林法執行・統治・貿易(ELEGT)」に関するアクション・プランを採択(欧州委、違法伐採木材と闘う行動計画 環境団体は実効に疑念,03.5.23)、10月にはEU諸国も承認している。今回は、アクション・プランの具体化のために、木材生産国との連携協定交渉のための委任に関する勧告と木材輸入許可自主計画実施のための規則を採択した。

 昨年のアクション・プラン採択に際しては、環境保護団体が協定が自主的であるために実効を懸念、違法伐採木材の没収と取引業者の告発を許す法律を要求していた。しかし、今回の採択に当たり、ポール・ニールソン開発・人道援助担当委員は、自主的協定では不十分、木材生産者は調印しないだろうと言い、違法木材輸入のEUによる一方的禁止を要求する批判者に、次のように反論している(Statement on the adoption of certain measures against illegal logging (FLEGT))。

 ・相手国との十全な協力がなければ、EU(諸国)税関当局が木材の合法性を検証する手段はない。また、一方的アプローチでは、成否のカギを握るこれら諸国の統治の強化に建設的な役割は果たせない。

 ・生産国が参加しないことはあり得るが、アフリカの主要生産国は、現在森林から盗まれている丸太に対する税金の徴収を通して木材収入を65%増やすことができると推計され、参加への誘因があることは明白である。

 彼は、協力がある場合にのみ成功する、「木材生産国は、違法活動から利益を得ることを困難にするために、法、政策、慣行に必要な改革を導入しなければならない。消費国政府は、自国の需要が違法行為を刺激し続けることによってこれらの困難な改革を蝕まないように保証しなければならない」と言う。これは、有効性が確信できる「エキサイティングな新しいアプローチ」だと自賛している。

 欧州委員会のQ & Aによると(Forest Law Enforcement, Governance and Trade (FLEGT) ? Questions and Answers)、連携協定は、生産国の統治の強化支援から輸入許可計画の実施の約束まで、広範な問題にかかわる。すべての連携国は、合法の定義に合意し、また輸出される木材が国法に従って合法であることを検証する適切なシステムをもった信頼できる法的・行政的組織を持つ必要がある。

 これは、@適用される森林法が首尾一貫し、理解可能、執行可能で、基礎的な持続可能な森林管理原則を支持するものであることを保証し、A収穫事業が関連法に従うことを保証する信頼できる技術的・行政的システムを開発し、B合法的に収穫された木材の輸出を許可するための手続を開発する約束を含む。

 一部木材生産国では、これらの約束を満たするためには相当の制度強化と能力建設が必要であり、協定にはEUの技術・財政援助を含むことができる。

 違法伐採を有効に抑制できるのかどうかという問題については、欧州委員会は、EU域内市場は違法伐採を刺激する市場と利益を提供しており、この市場を閉ざすことで違法伐採への誘因となる構造を掘り崩すことになろうと答える。木材国際貿易を規制する多角的フレームワークが違法伐採に取り組む最も包括的な方法だが、この問題に関する国際的対話の進展は遅々としており、EUが先導すべくこの提案を行ったと言う。

 EUは、価額ではアフリカの丸太、製材の最大の輸入地域であり、アジアの製材の世界第二の輸入地域となっている。途上国でますます広がる違法伐採をEUの木材消費が刺激していることは間違いない。

 違法伐採とこれに結び付いた木材貿易は、途上国で莫大な環境破壊や洪水被害、森林に依存する農村コミュニティーの貧困化を引き起こしている。それが政府・役人の腐敗・汚職、悪しき統治に関係していることも確かである(例:インドネシア:森林消滅の危機、農民にも脅威,02.9.29)。だが、多くの貧民が違法伐採で収入を得、生計を立てていることも事実である。違法伐採抑制は、このような人々の生計を破壊する恐れはないのか。欧州委員会は、自主的協定の枠内で、仕事を失う人々に代わりの生計手段を提供する努力がされると言う。

 日本も、8割以上が違法伐採と言われるインドネシア木材の主要輸入国である(「インドネシア 荒れる森林 8割超が違法伐採 多くが日本へ 流入防ぐ体制必要」 日本農業新聞、7.18)。 折りしも、進行中の自由貿易協定交渉で、マレーシアは、対日輸出農林水産物総額の36%を占める(02年)合板の関税撤廃を要求しているが、マレーシアはインドネシア違法伐採木材の最大の密貿易先だ(グリーンピース、違法伐採の監視強化を計画インドネシア、違法伐採で行動を取れとマレーシアに圧力,04.3)。違法木材輸入抑制は日本に突きつけられた緊急の要求でもある。