パプアの違法伐採木材 世界最大級の密輸摘発 国際犯罪組織が関与の報告

農業情報研究所(WAPIC)

05.2.18

 国際環境犯罪を摘発している非政府組織・環境調査エージェンシー(EIA、ロンドン、ワシントン)とそのインドネシアの提携団体であるテラパックが17日、世界最大と評する組織的木材密輸を摘発する「最後のフロンティア:パプアの違法伐採と中国の木材大量窃盗」と題する報告書を発表した(⇒http://www.eia-international.org/cgi/reports/report-files/media93-1.pdf)。インドネシア・パプア東部で違法に伐採された東南アジア最高級の床材とされるメルバウが、中国を経てヨーロッパや米国に売られているという。

 過去3年間、毎月平均30万立方メートルがパプアから密輸出されており、すべてがヨーロッパや米国で売られたとすると取引額は年間10億ドル(1ドル100円として1000億円)を超える。伐採者には1立方メートル当たり1000円ほどが払われ、インドネシアでは丸太輸出は禁じられているから、通常はマレーシアの偽造ラベルが付された後、中国では2万5000円に跳ね上がる。欧米での市場価格はさらにその10倍以上の30万円ほどになる。

 テラパック関係者が現地の記者会見で語るところでは、現在の率で違法伐採が続けば、最大の残存森林が地域を覆うパプアは10年で丸裸になってしまうだろう、インドネシアにはこのような大量の木材の供給地はどこにもないから、状況は悪化する一方だという。英国・ガーディアン紙によると、環境団体は、インドネシアでは毎年、ウェールズの2倍の面積の森林が違法に切り倒されていると推定する(Timber smuggling ring exposed,The Gurdian,2.18)。

 報告は、これほどの密輸は、伐採から船がインドネシア水域を離れるまで、すべての段階でインドネシアの軍と警察のメンバーの参加なしでは不可能で、彼らはまた、急増する中国の木材加工需要を目当てに大量のメルバウを調達する国際犯罪シンジケートの一員だと指摘する。船舶を保護するジャカルタに本拠を置くボス、マレーシアのギャング、シンガポールの船積み会社、中国に売る香港のブローカーがそれぞれ役割を演じている。

 インドネシアと中国は02年12月、違法伐採木材の購入を阻止するための森林法執行・取り締まりに関する了解メモランダムに調印したが、政府機関内の腐敗のために、それがまったく執行されていないということだ。欧米、そして日本も、消費国として違法木材を締め出す有効な手段の構築に本腰を入れる必要がある。

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 NGOs accuse TNI, officials in biggest timber heist ever,The Jakarta Post,2.18

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