FAO/WHO:ポテトチップス等食品中のアクリルアミドに関する専門家会合

農業情報研究所(WAPIC)

02.7.4

 今年4月、スウェーデンの研究者が、癌を引き起こしたり、神経システムを損傷すると考えられているアクリルアミドがポテトフライ、ポテトチップスのような澱粉ベースの食品に高いレベルで含まれていると発表した(高澱粉フライ食品に発癌のリスク発見ースウェーデン研究者,02.4.25)。その後、この事実はイギリスの食品基準庁(FSA)(イギリス:研究、食品中のアクリルアミドを確認)その他の研究により再確認されてきた。しかし、この事実が人の健康にとってどのような意味をもつかは十分に明らかになっていない。この問題を協議するために、6月末、世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)が主催する専門家パネルが開かれた。パネルは、この発見が深刻な問題を提起するものであることを一致して確認したが、現在の限定された知見では消費者やその他の関係者が発してきた質問に完全に答えることはできないと言う。そして、一層の研究を要請した。以下は、この会議について報告するFAOのニュースを要約・紹介するものである(下線は紹介者が付した)。

 基本的食品中のアクリルアミドに関する追加研究、科学者が言明
FAO News:Additional research on acrylamide in food essential, scientists declare ,6.28)

 WHOとFAOが主催する食品中のアクリルアミドの含意に関する専門家協議が、昨日、ジュネーブで終結した。会議を主催した両機関は、フォローアップとして、人間の(この化学物質への)暴露とそのあり得る健康影響の理解を改善するために、アクリルアミドに関する研究ネットワークを確立することを計画している。アクリルアミドは、一層詳細な評価のための食品添加物に関するFAO/WHO共同専門家委員会の来るべき会合の議題に優先項目として付け加えられる。

 発癌性・毒性学・食品テクノロジー・生化学・分析化学を専門領域とする23人の科学者の協議は、緊急に研究が必要な多くの問題を確認した。アクリルアミドは実験動物では癌を引き起こすことが知られているが、アクリルアミドと人間の癌の関係に関する研究はまったく行われていない。

 現在の平均的摂取のレベルから人間に癌が発生するかどうかを予測する理論的モデルは、確たる結論を導くほどの信頼性をもたない。ラットの研究では、アクリルアミドは、肉を揚げたり、焼いたりするときに出来る一定の芳香族炭化水素のような、調理を通して形成される周知の他の発癌物質と類似の効能を有する。しかし、アクリルアミドの摂取量のレベルは、もっと高そうである。従って、協議は、食品中のアクリルアミドの問題が重大関心事であることを認めた。

 協議は、利用可能なデータが人々の食事中のアクリルアミドのレベルにより提起される癌のリスクの数量的評価を出すには不適切なものであると考えた。科学者は、処方・加工・その他の方法の変更により食品中のアクリルアミドのレベルを減少させる可能性の調査を要請した。

 アクリルアミドはプラスチックの製造に使われる化学物質である。それは、最初、2002年4月にスウェーデンで発表された研究結果として、高温で調理された一定の食品の中に存在することが発見された。それは既知の発癌物質であり、神経損傷を引き起こす。

 スウェーデンの研究とそれに続くノルウェー、スイス、イギリス、米国での研究は、ポテトチップス、フレンチフライ、クッキー、シリアル、パンのような一定の澱粉ベースの食品の中のアクリルアミドが飲料水のためにWHOが許したレベルを十分に上回ることを発見した。

 しかし、すべての源泉からのアクリルアミドの平均的摂取レベルは、成人一人・一日当たり70マイクログラムほどとされており、実験動物で神経損傷を引き起こすことが分かっているレベルよりもはるかに低い。

 「利用可能なすべてのデータを検討したのち、我々は、新たな発見が深刻な問題を提起するものであると結論した。しかし、現在の我々の限定された知識では、消費者、規制当局、その他の関係者により問われてきたすべての問題に答えることはできない」。

 摂氏120度以上で調理するときにアクリルアミドができる食品には、ポテトチップス、フレンチフライ、パン、加工シリアルが含まれる。しかし、他の食品も同様にアクリルアミドを含むのかどうか、研究が行われてこなかったために、科学者は決定できない。専門家は、ヨーロッパ・北米以外の地域での食事の一部として消費される食品に関するデータがなく、一層の研究は必要と強調した。

 人体中のアクリルアミド全体の中で、澱粉ベースの食品からくるものはどれほどの比率を占めるのか決定することができない。果実・野菜・肉・シーフード・飲料・タバコなどからも人体にアクリルアミドが入り得るから、人体中のアクリルアミド総量のどれほどが食品起原のものかは分からない。

 科学者には、人体がどれほどの速さでアクリルアミドを分解するかも分かっていない。

 協議は、

 −調理の過程でアクリルアミドがどのように形成されるのかの決定、

 −人間における関連した癌の疫学的研究、

 −欧州・北米以外の食事の存在するものも含めた他の食品の中のアクリルアミドの研究、

を含む一層の研究が必要と勧告した。

 関連情報
 イギリス食品基準庁(FSA):Acrylamide statement following World Health Organization meeting ,6.27
 Panel Calls Acrylamide in Food a 'Serious' Risk,,The Washington Post,6.28

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