農業情報研究所


イギリス:農薬残留の現状と「地球の友」の批判

農業情報研究所(WAPIC)

02.8.12

 8月7日、イギリスの農薬残留委員会(PRC)が、英国(UK)で販売されている食品中に禁止農薬が残留しているという今年1月から3月までの調査結果を発表した(Pesticide Residues Committee (PRC) First Quarter 2002 Monitoring Results (January - March 2002) ,8.7)。報告は、検査されたレタスの半数に違法農薬が含まれていることも明かにしているが、農薬が残留しているリンゴの数は大きく減ったともいう。

 報告によれば、

 ・違法農薬は、スーパーチェーン・サマーフィールドから購入されたヤムイモ(殺虫剤・カルベンダジム)と英国産レタス(イギリスではレタスへの使用を禁止されている殺虫剤・ビンクロゾリン)に発見され、リンダン(イギリスでは禁止)も牛肉中に発見された。

 ・スウィート・ポテトの61%が残留農薬を含んでいた。

 ・残留農薬を含むリンゴは27%で前年に比べて大きく改善(ただし、この調査の対象は前年第4四半期のもの)。

 先月、加工ベビーフード中への農薬残留を禁止する新規則が実施されており、「地球の友」は、この調査結果を受け、同じ規則がすべての生鮮野菜・果実にも適用されるべきだと言っている。また、政府の食品安全アドバイザーは残留ゼロを目指すべきだと言ってきたが、この結果はその道がなお遠いことを確認するものだとも言い、小売業者と政府に対して、輸入生産物中の違法農薬の監視を強める一方、イギリス農民が危険な農薬に代わる代替手段を見出すように助けるべきことも要請している(NEW RESIDUE DATA SHOWS NEED FOR PESTICIDE ACTION,8.7)。

 「地球の友」は、同日、1998年から2001年までに発表された政府データに基づき、大部分のスーパーマーケット・チェーンで販売される野菜と果実の半分近くのサンプルに農薬が残留しているというスーパーマーケット・チェーンの「成績一覧表」も発表した(SUPERMARKETS MUST ACT ON PESTICIDES,8,7)。サマーフィールドは最悪の成績で、60%以上のサンプルに残留が認められる。今までに、マークス&スペンサー(M&S)とCo-opは特定農薬を段階的に廃止し、残留ゼロを目指す政策を導入したが、他のスーパー(アスダ、テスコ、セインズベリー、サマーフィールド、セイフウェイ)は、重要な意味のある措置は何も講じていないという。

 「ガーディアン」紙によれば、サマーフィールドは「残留はスーパーの現実である。農薬は法的にコントロールされている。我々はこれらすべての法的要請を満たしている」と言う(M&S calls on other stores to ban pesticides,Guardian Unlimited,8.8)。食品安全庁(FSA)は「地球の友」の分析を、残留は認められた安全性のレベルを決して越えておらず、「最大限残留レベル(MRL)」(安全性のレベルではなく、「良い農業慣行」のために設定されたレベルー現在の農業で実行可能なレベルである。)を越えているにすぎないことを何も述べていないと批判した。しかし、「地球の友」は「低いレベルでも心配の種はある。我々は農薬の全混合物に曝されているが、検査は個別の農薬について行なわれるだけだ。我々はトータルな暴露を心配する必要がある」と言う(Pesticides found on much of supermarket fresh food,Independent,8.8)。こうして、「地球の友」は先に述べたような政府の一層の対策を要請している。

 「トータルな暴露」のリスクについては、日本でもほとんど問題にされていないように見える。今後、十分に考慮すべき問題と思われる。

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