鮭消費の便益・リスク分析 スコットランド・ノルウェー・カナダ東部養殖鮭は年に3回まで

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.9

 昨年末、ロシアが高濃度の鉛とカドミウムが含まれるとしてノルウェー産養殖鮭の輸入を禁止しようとしていると伝えた(ロシア ノルウェー産鮭の輸入全面禁止へ 高レベルの鉛とカドミ発見のため,05.12.21)。ノルウェー側はロシアの主張を否定しているものの、以来、ノルウェー産鮭の安全性が気になり、関連情報を探していた。そのなかで、この問題とは直接関係ないが、米国研究チームが昨年11月、塩素化農薬、ダイオキシン、PCBsなどによる汚染のために、スコットランド、ノルウェー、カナダ東部の養殖鮭は年に3回以上食べるべきではないとする研究を発表していたことが分かった。.

  Barbara A. Knuth et al,Quantitative Analysis of the Benefits and Risks of Consuming Farmed and Wild Salmon, the Journal of Nutrition,November, Vol. 135.
  Abstract:http://www.nutrition.org/cgi/content/abstract/135/11/2639

 この研究は、養殖鮭と野生鮭を食べる便益とリスクの定量分析を試みたものである。養殖鮭は野生鮭よりも心臓病のリスクを減らすオメガ3脂肪酸を多量に含む。だが、癌や記憶力損傷・子供の神経行動変化を引き起こすとされる化学物質汚染のレベルもはるかに高い。そこで、これらの鮭を食べる便益とリスクを比較、消費者選択の的確な指針を提供しようとしたわけだ。

 研究は、大きな地域差はあるものの、一般的には、太平洋の野生鮭を食べる純便益は大西洋の養殖鮭を食べる純便益を凌ぐことを明らかにした。しかし、発癌性のある汚染物質を生涯にわたり蓄積するリスクのある若い人々や、胎児に先天性疾患・IQの減退・その他の損傷をもたらすリスクのある妊婦については、リスクが便益を大きく上回るという。

 研究は、スコットランド、ノルウェー、東部カナダの養殖鮭は年に3回以上食べるべきではない、また、メイン州、カナダ西部、ワシントン州の養殖鮭は年に3回から6回、チリの養殖鮭は年に6回食べるにとどめるべきという。他方、野生のシロサケは週に1回まで、カラフトマス、ベニザケ、ギンザケは月に2回まで、マスノスケ(キングサーモン)は月に1回までは安全に食べられるという。

 この研究について伝えるコーネル大学のオンライン・ニュースによると、魚の化学物質汚染に関連したリスク管理の専門家で、この研究を率いたBarbara Knuth教授は、養殖鮭の汚染度には地理的な差があるから、心臓病の病歴のある消費者は汚染が比較的少なく、オメガ3脂肪酸の含有量が多いチリ産を選ぶべきで、北米産養殖鮭が第二の選択肢と言う。

 Cornell News Service :Stick to wild salmon unless heart disease is a risk factor, risk/benefit analysis of farmed and wild fish shows,05.12.22
 http://www.news.cornell.edu/stories/Dec05/salmon.ssl.html

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