オランダの新研究 アクリルアミドと子宮・卵巣癌の関係を確認

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.4

 澱粉質に富むジャガイモなどをはじめ、広範な食材をあぶったり、揚げたり、焼いたりするときに発生が避けられず、特にポテトクリスプ、ポテトチップス、フレンチフライ、ビスケット、クラッカー、朝食用シリアル、トウモロコシチップス類、チョコレートパウダー、コーヒーパウダー、パンなどに大量に含まれるアクリルアミド発癌を促すという5年前のショッキングなニュース(高澱粉フライ食品に発癌のリスク発見ースウェーデン研究者,02.4.25)など、もはや大半の人が忘れているのではなかろうか。

 その後の新たな研究成果はほとんど現われず、日本の厚生労働省の対応策も02年以来変わらない。このときの「(1)・・・十分な果実、野菜を含む様々な食品をバランスよく取り、揚げ物や脂肪食の過度な摂取を控え、(2)炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合にはあまり長時間、高温で調理しないよう」という消費者向け勧告を気にしている人がどれほどいるだろうか(日本:厚生労働省、加工食品中のアクリルアミドで対応決定,02.11.2)。「揚げ物や脂肪食の過度な摂取」など、むしろますます進んでいるのかもしれない。

 アクリルアミドのことなど皆が忘れかけているまさにそのとき、アクリルアミドと子宮・卵巣癌の直接的関係を確認するオランダ・マーストリヒト大学研究者による新たな研究が現われた。EUや英国の当局は、直ちに改めての注意を喚起したという。

 'Burned foods' linked to cancers,BBC News,12.3
 http://news.bbc.co.uk/2/low/health/7124501.stm

 Is cooked food dangerous?,The Guardian,12.4
 http://www.guardian.co.uk/g2/story/0,,2221384,00.html

 研究者は、6万2000人が女性で構成される12万人のボランティア協力者の食習慣を11年にわたり追跡した。この間に、327人が子宮癌、300人が卵巣癌に罹った。1日に40mgのアクリルアミドークリスプ1箱(32g)などに相当ーを食べた人がこれらの癌になる率は、それほど食べなかった人の倍だった。ただ、これだけの大規模な研究にもかかかわらず、研究者は、なお他の研究による研究結果の確認が必要だと言っている。

 この研究結果を受け、英国癌研究所のレスリィ・ウォーカー博士は、発癌が多かったのがアクリルアミドのせいだと確かめるのは難しく、女性の他の不健康な食事のためかもしれない、女性は過度に心配すべきではないと言っている。

 ただ、EU報道官は、「フレンチフライやローストポテトは、ゴールデン・ブラウンよりも、ゴールデン・イエローに調理すべきだ」と、炭水化物を多く含む食品の焼きすぎ、揚げすぎ、あぶりすぎに注意を喚起した。

 英国食品基準庁(FSA)の報道官は、果物と野菜が豊かなバランスの取れた食事を取るように要請、「この新たな研究は、アクリルアミドが人間の発癌物質である可能性を既に想定した現在の勧告を支持する」、「アクリルアミドは広範な種類の調理食品に自然に生成するから、健康的で、バランスの取れた食事を取ろうとすれば、それを回避することは不可能」、すべての婦人が、恐らく毎日、アクリルアミドを摂っているが、すべてが子宮癌や卵巣癌になるわけではない、と語ったという。

 ただ、この問題は、健康リスクがほとんど考えられない消費期限偽装なの偽装問題と同じように考えるわけにはいかない。リスクが実際に小さいならばともかく、リスク回避のコストが高すぎるために過度に心配すべきでないということなら、 ありふれた偽装に比べて人々が鈍感な国家公認の偽装につながる。他の研究によるこの研究結果の再確認が急務だ。