モンサント 牛成長ホルモン事業売却へ 酪農家の継続利用は保証

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.8

  モンサント社が8月6日、乳牛用人工成長ホルモン:POSILACの生産事業を売却すると発表した。バイテク種子のコア部門に集中するためで、酪農家は今まで通りにこのホルモン剤を利用できるように保証するという。

 Monsanto to Pursue Divestiture of POSILAC,Monsanto News Release,8.6
 http://monsanto.mediaroom.com/index.php?s=43&item=626

 POSILACとは、BSTの名で知られ、遺伝子組み換え(GM)バクテリアが生成する牛成長ホルモンのブランド名である。1993年に食品医薬局(FDA)が承認、これを乳牛に注入すると1日当たり乳量が1ガロン(約3.8リットル)増加するとされ、1994年から米国で販売されるようになった。農務省(USDA)の2007年の調査によると、米国乳牛の17%がこのホルモンを注入されている。

 しかし、この合成ホルモンについては、牛の健康を損なう、人間にも発癌のリスクがあるとされ、EUはこのホルモンを使った牛の製品の米国からの輸入を早くから禁止してきた。米国はリスクの科学的証拠はないとWTOに提訴、WTOも米国の肩を持つ裁定を下しているが、EUは自身のリスク評価に基づき、未だに禁止を解いていない(参照:英国土壌協会 牛肉残留成長ホルモンの新たなリスクで警告 検査強化も要求,06.7.4)。

 それだけではない。ウォルマート、クローガー、パブリックスなどの米国主要小売業者がBSTフリーを売り物とする牛乳を売り出すようになっている。米国最大の牛乳ボトラーのディーン・フーズが販売するほとんどすべての牛乳はBSTフリーとなっている。モンサントは 米国連邦公正取引委員会(FTC)に対し、人工ホルモン・フリーと広告する企業の取り締まりを訴えたが、これも退けられた(米連邦公取(FTC) モンサントの合成ホルモン・フリー牛乳広告取締り要求を拒否,07.8.30)。

 モンサントの発表は触れていないが、今回の決定がこのような動きと関連していることは間違いないだろう。ただ、これはあくまで安全で、欲しがる農家があるかぎりは提供を続けると言う。この発表は、コーネル大学の最近の研究が酪農の環境影響を減らす手段としてのこのホルモンの役割を強調したと付け加えている。

 関連ニュース
 Monsanto Looks to Sell Dairy Hormone Business,The New York Times,8.7
 http://www.nytimes.com/2008/08/07/business/07bovine.html?ref=business

 農業情報研究所の関連情報
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/foodsafe/hormon.htm