農業情報研究所


米国新農業法案、EU・豪・加が強く批判

農業情報研究所(WAPIC)

2002.5.1

 米国議会の上下院の妥協の成立により今月初めにも最終的に採択される見込みとなった米国新農業法がWTO農業交渉の主要な交渉相手の激しい反発を招いている。

 この農業法案では、100万足らずの米国農民のために向こう6年間で1000億ドルが支出され、そのほとんどを最大規模の10%の農民がつかむことになる(米国:新農業法、上下両院の妥協が成立、オーストラリア失望,02.4.30)。これらの農民は市場価格から隔離され、コーン、小麦、コメ、大豆、棉などの作物についての最低価格を受け取る。

 30日、スペインで開かれたEUの非公式農相会議の後、フィシュラー農業担当EU委員は、米国は他の国に説教しているのと反対のことを行なっていると激しく攻撃した。彼によれば、この法案は一層の市場歪曲をもたらすもので、その補助金は隠れた輸出補助金以外の何ものでもなく、発展途上国に深刻な困難を生むことになる(Fischler slams US for "flunking farm policy reform")。

 Financial Times(Fischler attacks US farm subsidy plan,FT com,5.1)が伝えるところによれば、EU公式筋は、EUの補助金はもはや生産に直接関連していないが、米国は逆の方向に向かっており、過剰生産を刺激、世界商品価格を押し下げることになると語っている。オーストラリアの反発については米国:新農業法、上下両院の妥協が成立、オーストラリア失望,02.4.30で述べておいたが、30日にはカナダ農相も、新農業法は現在のWTO交渉における米国への信頼に対する深刻な打撃となる、新たな措置により米国農業部門への補助は世界で最大になると非難を発した(Press Release:CANADIAN AGRICULTURE MINISTER SLAMS U.S. FARM BILL,02.4.30)。

 残された問題は、このような法案にブッシュ大統領が調印するかどうかであるが、このような高額の支出に反対し、中小規模家族農業や土地保全プログラムへの支出の増加を求めていた当初の姿勢は、余りに強大な農業ロビーと議会の政治的圧力の前に打ち砕かれそうである。両院の妥協成立後、大統領も農務長官も、この点についてまったく発言していない。

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