農業情報研究所

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EU穀物輸入制度変更、米加との交渉が決着

農業情報研究所(WAPIC)

02.11.14

 難航が予想されたEUの穀物輸入制度変更をめぐるWTO内での米国・カナダとの交渉(EU:穀物輸入関税制度変更交渉を提案、米国が反発,02.7.3;EUの穀物輸入制度変更、貿易戦争の可能性,02.9.20)が決着した(European Commission,Commission and Canada conclude negotiations on new cereal import regime,11.12;Commission and US conclude negotiations on new cereal import regime,11.12)。EUが輸入急増により制度変更の引き金となったWTO未加盟のロシア・ウクライナの主要輸出品である中・低質小麦(飼料用)と大麦の輸入制度変更にとどめ、米国からの輸入の厳しい制限を回避することにより合意に達したものである。

 合意によれば、2003年1月にスタートする中・低質小麦の関税率割当量は298万1,600トンで、このうち米国には57万2,000トン、カナダには3万8,000トンが割り当てられる。割当内の関税率はトン当り12ユーロ、割当を超える分については従来どおりトン当り95ユーロのされた。醸造用大麦の割当量は5万トン、その他の大麦の割当量は30万トンで、割当内の関税率はそれぞれ8ユーロ/トン、16ユーロ/トンとなる。大麦の割当外関税率は93ユーロ/トンと不変に維持された。

 遺伝子組み換え作物をめぐる深刻に対立はなお残るが、農産物貿易をめぐる米欧の紛争の火種の一つが消え、米欧関係の一定の改善にはつながるものの、交渉の埒外に置かれ、EUへの輸出減少が不可避のウクライナ・ロシアとの対立は深刻さを増すであろう。ウクライナのEU大使は、早速、これは不公正で、ウクライナの農業部門改革を助けるというEU自身の努力を掘り崩すと非難の声をあげた(Ukraine protest at EU cut to grain imports,FT com,11.14)。ロシアは、既に「貿易戦争」の可能性を告げている(EUの穀物輸入制度変更、貿易戦争の可能性,02.9.20)。