農業情報研究所
WTO農業交渉モダリティ第一次案への最初の反応ーEU、米、豪
農業情報研究所(WAPIC)
03.2.13
12日に各国政府に配布されたWTO農業交渉モダリティ一次案(⇒WTO農業交渉モダリティ一次案ー米国、EU案との比較表,02.2.13)に対し、EU、米国、オーストラリアが三者三様の反応を示している。
EUー非貿関心事項への配慮と「すべての形態の輸出補助」削減の欠如が問題
欧州委員会は、12日、「農業に関するハービンソン議長のモダリティ・ペーパー草案への欧州委員会の最初の反応」と題するプレス・リリースを発表した。
それは、このペーパーが先進国間に不均衡な負担を課すものとなっており、WTO加盟国が表明してきた意見のバランスを反映していないと遺憾を表明する一方で、コンセンサスの追求を容易にする別の側面もあるとしている。
特に問題としているのは、非貿易関心事項への配慮とすべての形態の輸出補助金の削減が欠如していることである。草案は、輸出補助の様々な形態に均等な規律を課そうとしておらず、他の主要先進国が与える一定の形態の補助金による巨大な市場歪曲への取り組みを欠くことになっていると言う。 また、後発途上国のための先進国市場への無税・無割当のアクセスに関する野心を欠き、先進国市場への特恵アクセスの侵食[一般的な関税削減により特恵関税の効果が薄れること]に直面する他の途上国の困難に関する具体的提案も欠いていることを遺憾としている。
他方、食糧安全保障のために途上国にとって特に重要な農作物に関する特別扱いの提案に強い歓迎の意を表明している。
米国ー市場アクセス改善と貿易歪曲的補助削減の不十分が特に問題
米国農務省は、12日、ベナマン長官が声明を出した(⇒)。それは、この案が削減約束の適切なバランスを確立する基礎になると信じると言う一方、市場アクセスと国内助成の両分野で調和と均衡を欠いていると懸念を表明する。さらに、市場アクセスに関する野心のレベルは低いし、貿易歪曲的国内助成の許されるレベルに関する不均等の永続化は特に問題があると言う。
オーストラリアー補助金削減と自由化が不十分
ヴェイル対外貿易相が、13日、提案は十分に改革を前進させるものではないというメディア・リリース(WTO Agriculture Reform Proposals Don't Go Far Enough)を出した。彼によれば、ペーパーが含む野心のレベルはオーストラリア農民を失望させるもので、その農業貿易に多大な損害を与える巨額な補助金と高度な保護に十分に取り組んでいない。
彼は、EUと日本により提案されたウルグアイ・ラウンド削減約束と国内助成の新たな規律を拒んだのは良いが、ケアンズ・グループが求めてきたことにははるかに足りない、大幅な改革なくしては農業交渉は成功に至らず、これは世界経済にとっての悲劇だと言う。