欧州委 グローバル化で解雇の多数労働者を助ける資金を支払い

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.21

 欧州委員会が12月20日、”グローバリゼーション”の影響で解雇されたドイツ:3,300人、フィンランド:1,000人の労働者のできるだけ早期の復職を助けるために、EUグローババリセーション調整基金(EGF)から1,480万€(1€≑160円)を支払った。

 いずれも移動電話生産のアジア等への移転にかかわる。ドイツへの支払は、台湾の移動電話製造企業・BenQの二つのドイツ子会社における解雇に関連している。BenQは2社への金融支援を打ち切った。フィンランドへの支払は、移動電話部品製造会社・Perlosの二つの工場での解雇に関係している。会社 は今年9月、フィンランドでの生産活動の停止と工場閉鎖を決定した。支払は、解雇された労働者が新しい生活を始めるための大きな助けになろうという。

 EGF創設は2006年3月に欧州委員会が提案、基金は今年1月に発足した。以来、今までに4件の申請が承認され、支払が行われた。最近、繊維労働者に関するマルタからの申請が承認された。さらに、イタリアからの3件、ポルトガル、スペインからの各1件、計5件の申請を欧州委員会が分析中ということだ。

 European Commission,€ 14.8 million from EU Globalisation Fund to help German and Finnish mobile phone workers,07.12.20

 このような労働者支援は、対外投資・貿易政策を決定するEUが、その結果に責任を取るべきという考えに基づく(欧州委員会 グローバル化の悪影響を受けた労働者を助ける基金創設を提案,06.3.3)。しかし、このような雇用への悪影響が現実のものとなっているとすれば、これは、今やこのような結果を生む政策そのものの再考も迫っているのではなかろうか。

 折りしも、G8議長国・ドイツのメルケル首相は19日、世界経済諸機関―OECD、ILO、WTO、IMF、世銀―の指導者を招いたベルリンでの会合で、グローバリゼーションを社会的に一層公平にするための一連の政治的基本ルールを確立することを要請したという。 

 Merkel Calls for Ground Rules for Globalization,DW-world,12.20
 http://www.dw-world.de/dw/article/0,2144,3013668,00.html

 彼女は、グローバリゼーションが作りだす機会はリスクを凌ぐが、過程は一層建設的に形作られる必要があると語り、リーダーたちは、金融市場の透明性、知的財産権、オープン・トレード、開発支援などの問題を議論した。このような会合は毎年行われるようになる可能性もある。メルケル首相は、来月G8の議長となる日本に、グローバリゼーションに関する定期的協議のための世界経済機関リーダーの会合を続けるように提案すると語った。OECDのホセ・アンヘル・グリア事務局長も彼女を支持、将来は5機関が”もっと構造的な基盤の上で”年に一回会合を持つという彼の提案は肯定的に受け取られてきたと言う。

  関連情報
 ヨーロッパ人はグローバリゼーションをどう見ているかーEUの調査報告,05.6.2