WTO・G4閣僚会合決裂 ドーハ・ラウンドの行方は闇 

農業情報研究所(WAPIC)

07.6.22

  ドイツ・ポツダムで開かれていたWTOドーハ・ラウンド打開のためのG4(米国、EU、ブラジル、インド)閣僚会合が、米国の農業補助金削減問題で妥協がならず、予想通り(WTO・G4閣僚会合開始日 米下院委員会が現行農業補助システムの5年延長案を採択,07.6.20)決裂した。 米国は20日、先般カナダが要求した米国農業補助金に関するWTO紛争処理パネルの設置(カナダ 米国農業補助金はWTOルール違反と紛争処理パネル設置を要請,07.6.9)も阻止しており(WTOルールでは、被提訴国は1回だけは紛争処理パネル設置要求を拒否できる)、これによっても妥協の余地がないことが示されている。これでドーハ・ラウンドの年内妥結の見通しはほぼ完全に消え、ラウンド自体の行方もまったく見えなくなった。

 米国やEUとの経済連携協定(自由貿易協定=FTAを核とするEPA)を急げなどという声がまたまた高まるかもしれない。しかし、それは見識のなさ か、あるいは特定利益集団を代弁するイデオローグにすぎないことをさらけ出すようなものだ(米韓FTA交渉妥結 フィナンシャル・タイムズ紙が”政治的愚行”と批判,07.4.4)。

 第一、先進国の工業製品輸入関税は、戦後のガット・WTOの下での度重なる多角的交渉で大きく引き下げられてきた。いまや貿易障壁としての意味はほとんど失われている。先進国間FTAの工業品貿易拡大効果は微小なもので、ちょっとした通貨変動でも打ち消されてしまう程度のものにすぎない。

 先進国間のFTAの大きな影響は、多角的交渉で工業製品のような関税・その他の貿易障壁引き下げが実現してこなかかった農業分野でのみ現れる。最大の利益を得るには農産物輸出先進国だ。日本は、輸出拡大効果も定かでない先進国との協定により、何故、田園が荒地と化すような危険を冒さねばならないのか。