農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力統計:2014年4月8日

オーストラリア牛肉輸入統計:2013年

 昨日伝えたように日豪EPA交渉が大筋合意に達したということだ(日豪EPA交渉が大筋合意 牛肉関税引き下げの畜産業への影響は最小限と言うが・・・)。牛肉関税を現行の38.5%から冷蔵肉は23.5%に、冷凍肉は19.5%に引き下げるなどの合意の国内畜産業への影響はいかなるものか。それを推し測るための基礎的材料として、豪州産牛肉の輸入量と輸入価格に関する統計数値を掲げておく。輸入量は引き下げ関税率輸入枠の80%ほどとなっている。輸入価格 (関税込み)に対する関税引き下げの直接的影響は、冷蔵肉が11%、冷凍肉が14%ほどの下げとなる。参考として、最近1年の国産牛肉小売価格も掲げておいた。

豪州産牛肉の輸入量と輸入価格

(財務省貿易統計による)

    輸入量(KG) 価額(1000円)

価格(円/KG)*

生鮮・冷蔵品 115649937 73267395 878
その他の骨付肉 15004 19066 1271
骨付きでない肉      
ロインのもの 15602575 18709428 1205
かた・うで・もも 69845248 38864691 556
ばら 27479534 14396289 524
その他 2707576 1277921 472
冷凍品 170273156 61911489 364
その他の骨付肉 78505 62202 792
骨付きでない肉      
ロインのもの 3899916 2115390 542
かた・うで・もも 19747816 9287097 470
ばら 33920552 12570017 371
その他 112626367 37876783 336

*CIF価格(保険料・運賃込み価格)。関税等は含まず。

参考:国産牛肉全国小売価格(2013年3月-2014年2月平均)

  かた ばら サーロイン もも
和牛 631 622 1143 628
交雑種 451 489 852 342
その他 291 362 610 336

農畜産業振興機構調べ

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  日本とオーストラリアが牛肉関税の段階的引き下げで大筋合意したのをめぐり、東北の銘柄牛産地には7日、安い牛肉の大量流入による価格下落への不安が広がった。今回の経済連携協定(EPA)合意は難航する環太平洋連携協定(TPP)交渉を前進させる可能性があり、市場開放の流れが一気に加速するとの危機感も漂う。
 山形県米沢市で約80頭の米沢牛を肥育する農家伊藤精司さん(64)は「消費者ニーズは質や味よりも価格の安さにある。和牛と似た品種がオーストラリアで生産されており、安価な霜降り牛肉がたくさん輸入されれば影響は免れない」と懸念する。
 「高級ブランドが確立された前沢牛は国内価格が安定しているが、今後の推移が心配だ」と話すのは、岩手県奥州市前沢区で前沢牛55頭を飼育する佐藤孝一さん(60)。「『さし』が入っている豪州産牛肉もあり、国産との競合は避けられない」と指摘した。
 「仙台牛」などを生産する宮城県登米市のみやぎ登米農協肉牛部会長の佐々木清信さん(66)は「等級の高い牛でも価格は間違いなく下がる」と断言。「価格が回復しつつあったのに、このままでは後継者難に拍車を掛けかねない」と顔を曇らせた。
 宮城県内の畜産農家は東日本大震災以降の価格低迷に加え、福島第1原発事故に伴う飼料用稲わらの汚染や風評被害などに苦しめられてきた。
 県農協中央会は「関税引き下げは復興への足かせになる。日豪EPAがTPPの門戸を開くことにつながる事態は防がなければならない」(営農農政部)と警戒する。
 TPPへの波及について東北大大学院農学研究科の冬木勝仁准教授(農業経済学)は「日本は日豪の二国間合意を、TPP交渉で米国側の妥協を引き出す材料にしたいとの狙いがある。関税撤廃を主張する米国の思惑は不透明だが、次回の閣僚級会合がヤマ場になる」との見方を示した。

◎飲食店・流通・小売り関係者/一部歓迎、様子見も

 東北の飲食店や食肉流通などの関係者は、牛肉関税引き下げを前向きに受け止めつつ、今後の見通しには慎重だ。
 ハンバーグレストランなど6店を運営するオールスパイス(仙台市)は、ギフト用冷凍ハンバーグでオーストラリア産牛肉を使う。角田秀晴社長は「消費税率の引き上げでは価格を上げるしかなかった。オーストラリア産の価格が下がれば、より安く商品を提供できる」と歓迎した。
 仙台市内の食肉卸会社の担当者も「いろんな食材の価格が上がる傾向にある中、一部でも安くなるのは非常にいいことだ」と話した。ただ、豪州や米国の牛肉は天候不順や為替の影響で仕入れ価格が大きく変動する。別の業者は「外食産業でオーストラリア産牛肉の使用が増えたり、価格が下がったりするかどうかは読めない」と冷静だ。
 みやぎ生協は、輸入牛肉ではニュージーランド産の扱いが最も多く、オーストラリア産は少ない。河野雪子店舗商品本部長は「今後、オーストラリア産を増やすことはないと思う」と国内生産者への配慮をにじませた。
 仙台名物の牛タンへの影響はどうか。専門店でつくる仙台牛たん振興会は「内臓扱いの牛タンは関税が12.8%で、今回の合意とは関係がないのではないか」と話している。

 
日豪EPA重大局面 栃木・酪農ルポ 失われる ぬれ子収入 日本農業新聞 14.4.5
 日豪経済連携協定(EPA)交渉がヤマ場を迎える中、酪農の生産現場に大きな不安が渦巻いている。オーストラリアが日本の重要品目に、市場開放を迫っているためだ。特に焦点の牛肉では、競合する国産乳用種(ホルスタイン)の枝肉相場が下落し、酪農経営を支える重要な副産物である初生雄牛(ぬれ子)の収入が途絶えかねない。さらに乳製品の市場開放を迫られた場合の打撃は、計り知れない。産地は重要品目を協定から除外することなどを求めた国会決議を守り抜くよう強く訴えている。
・乳製品市場開放なら「一気につぶれる」
 「経営は崖っぷち。押されれば転がり落ちる」。栃木県那須塩原市で酪農を営む高野廣一さん(65)は危機感を募らせる。安価な輸入牛肉の増加で肥育経営が行き詰まれば、ぬれ子などの需要が失われるためだ。
 搾乳牛130頭、育成牛50頭を飼養。飼料高騰が響き、コストの上昇傾向が続いている。昨年ようやく、飲用乳価が1キロ当たり5円引き上げられたが、加工向けを含めると手取りに反映されるのは同3円程度という。「流通業者の価格抑制志向が強く、乳価をさらに上げるのは厳しい状況だ」(高野さん)。
 所得確保には、生乳とは別に、ぬれ子や受精卵移植(ET)を活用した和子牛の販売が重要となる。これらの販売高は全体の1割超を占め、経営を維持していく上で貴重な収入源だ。日豪EPA交渉の成り行きを心配する高野さんは「飼料高騰などで本業の酪農経営が厳しい中、(副産物収入が)無くなれば経営は成り立たない」と厳しい表情だ。
 ホルスタインのぬれ子相場は枝肉相場に左右される。枝肉卸売価格(去勢B2等級・東京市場)は1991年の牛肉自由化以降、段階的な関税引き下げに伴って下落が続き、2012年は自由化前に比べ4割安になった。連動する形で、ぬれ子相場も12年には自由化前の6割安にまで落ち込んだ。牛肉関税の撤廃・削減は、一層の下落を招く。
 オーストラリア産牛肉は、今の消費動向から見ても脅威だ。「消費税増税で消費者の低価格志向が強まり、安価な輸入牛肉への移行が一層進む可能性がある」(流通業者)との見方もある。需要を失った肥育経営の収益が悪化すれば、子牛を販売する繁殖や酪農の経営にも連鎖的に打撃を与える。
 酪農家の戸数は、高齢化や飼料高騰など厳しい環境を反映し、減少の一途をたどる。農水省の畜産統計(13年2月時点)によると、乳用牛の飼養戸数は64年以降、50年連続で前年を下回り、調査開始以来初めて2万戸を割った。生乳生産量も減少傾向が続く。
 離農が後を絶たない背景について、JAなすの営農課の室井一男課長は「日豪EPA交渉や環太平洋連携協定(TPP)交渉による将来不安もある」と指摘する。
 こうした中、オーストラリアが乳製品に関心を示していることも不安をあおる。「安価な輸入乳製品が国内に出回れば、北海道の加工向け生乳が飲用向けに回るかもしれない。そうなれば都府県酪農は一気につぶれる」と高野さん。「厳しい経営環境に追い打ちをかけるような結果は万が一にもあってはならない」と、政府・与党に国会決議の順守を強く求める。

 
「畜産の未来、描けない」 競合の生産者悲鳴 日豪EPA大筋合意 朝日新聞 14.4.8
  7日に大筋合意した日豪の経済連携協定(EPA)で、牛肉の段階的な関税引き下げが決まった。価格の安い豪州産牛肉に、国産牛はどれだけ対抗できるのか。競合が予想される畜産関係者に不安が広がる一方、消費者からは期待の声があがった。
 「首の皮一枚のギリギリの経営。こんなひどい仕打ちは容認できない」。国内有数の肉牛の産地、北海道十勝地方の士幌町。肉用のホルスタイン1700頭を育てる鎌田尚吾さん(43)は怒りを隠さない。
 ホルスタインは主に乳用として飼育されるが、乳の出ない雄は肉用に育てられる。その肉は和牛に比べて脂が少なく、値段が安いといった特徴が豪州産と重なる。2012年度に国内で生産された牛肉36万トンの31%がホルスタインだ。
 最近の円安などで飼料価格が上がり、鎌田さんの牧場では経費が10〜15%増えた。これ以上、豪州産牛肉が安く入ってくれば死活問題にもなりそうだ。首都圏のスーパーでのPR活動などを進めてきたが、さらなる規模拡大や投資ができる状況にはない。「国民の胃袋を支える気概を持っている農家は多いのに、未来のビジョンが描けない」と嘆いた。
 ホルスタインと和牛の交雑種(F1)も、肉質が競合しそうだ。12年度の国産牛肉の21%を占める
 毎年4500頭のF1を出荷する岩手県の「キロサ肉畜生産センター」。竹内新也代表は「スーパーの輸入肉依存に拍車がかかれば、いくら産地が努力しても消費者に選んでもらえる機会を失ってしまう」と心配する。大手のスーパーでは今でも、輸入肉に押されて和牛以外の国産牛は苦戦を強いられているという。・・・
 
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