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タイ:農業除外の日本とのFTAは無意味

農業情報研究所(WAPIC)

03.5.17

 日本とタイは、タ2002年1月に小泉首相がタイのタクシン首相に対して包括的経済連携構想を提案、以来、日イ経済連携作業部会を設置し、自由貿易協定(FTA)の可能性も含めた将来の貿易・サービスにおける協力分野について協議を進めている。既に4回の会合が開かれており、次回の会合が来週に予定されている。最大の難題は農業分野の扱いである。タイ側は、FTAにより日本の農産物輸入関税が撤廃されることに最大の期待をかけているが、日本の農業者団体はWTO農業交渉に先駆けての農産物関税撤廃に強く抵抗、農水省も、既存のシンガポールとの協定をモデルに、既にゼロ関税になっている農産物の関税撤廃にとどめる姿勢を打出している。しかし、それでは、タイの主要関心品目は関税撤廃の対象から外され、タイにとっての協定締結の意味が大きく損なわれることになる。日本があくまでもこの姿勢にこだわれば、協定そのものが危うくなるであろう。

 4月には、タイが今年中の協定締結を期待、コメを関税撤廃の対象に含めることは断念したが、鶏肉、砂糖、タピオカについては関税撤廃を求めていると報じられたが(タイ、年末までに日本と自由貿易協定、コメ開放要求は取り下げ,03.4.14)、5月16日付のバンコク・ポスト紙は、日本が農業部門を交渉から除外すれば、タイ民間部門は経済連携協定を無視することになるだろうというタイのポーンシルプWTO共同コミティー事務局長の発現を報じている(Japan pressed to put farm issues in talks,Bangkok Post,5.16)。彼は、「日本が農業問題を交渉に含めなければ、この協力からタイが得るものは何もない」と語ったという。

 彼は、最近、日本政府が農業部門に関する交渉をしぶっていると知らされてから、このような懸念を強めた。農業部門をめぐる民間部門の懸念を農業省に対して表明したという。彼は、とりわけ、コメが微妙な問題であることはわかっているが、日本には砂糖、タピオカ粉、鶏肉を除外する確たる理由はないと言う。鶏肉については、日本は米国からの輸入を有利にするために、タイ鶏肉の輸入関税の削減を望まないのだと指摘した。現在、米国の骨付き鶏肉に対する日本の輸入関税は8.5%にすぎないが、日本がタイからの輸入を許している骨抜き鶏肉の輸入関税は11.9%である。

 彼は、さらに、日本とタイの経済協力は、将来の日本とASEANとの協力のモデルになるだろうから、日本が農業部門に関するタイとの交渉を拒めば、日本が現在FTAに向けて作業しているフィリピン、韓国、メキシコとの協定もご破算になる可能性が高いとコメントしたという。