コスタリカ、米国とのFTA延期の脅し、米国FTA戦略に暗雲

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.14

 カンクンWTO閣僚会合に際して形成されたブラジル・インド・中国などが主導するG21あるいはG22グループを解体させようとする米国の攻撃がすざましい。とくに自由貿易協定(FTA)交渉が進行中の中米諸国の切り崩し工作が激しく、米国市場開放のアメや援助打ち切りなどの脅しが一定の成功を収めている。グループは先週末、結束を固めようと、アルゼンチン・ベノスアイレスで非公式会合を開いたが、グアテマラとコスタリカはグループを離脱、集まったのは14ヵ国にすぎなかった。グループを牽引してきたアモリム・ブラジル外相も、いまやGxと言わざるをえなくなった。インド・中国・南アフリカを含む参加国は、ドーハ・ラウンド再開を目指す12月15日のジュネーブWTO会合に向けて、貿易自由化における多角的システムの死活的重要性を強調、「建設的精神の採択」を要請した。これは、WTO交渉そのものを拒絶するような一時の強硬な態度が和らいだことを意味する。

 しかし、これはWTO交渉の順調な進展を保証するものでもなければ、FTA交渉に決定的に傾いた米国の戦略の成功を保証するものでもない。G21またはG22グループから離脱し、あるいは米国とのFTA交渉に傾斜した中米諸国との協定(CAFTA)も米国の思惑通りには進まないだろう。

 ファイナンシャル・タイムズの12日の報道(Costa Rica may derail US free trade plans)によれば、G22グループを離脱したコスタリカもCAFTA交渉延期を余儀なくされかねない状況にある。コスタリカの1万5千の電気通信・電気労働者の激しい抗議のために、少なくとも6ヵ月の延期を余儀なくされ、これは協定全体を危機に陥れる可能性がある。コスタリカの最大の問題は、未だ公共事業である電気通信・電気・保険産業の自由化という米国の要求には政治的に到底底応じられないことにある、それでは政府がもたないという。3年前の電気通信・電気企業・ICEの民営化計画は、同国史上最大にして、最も激しかったとされる抗議で潰された。貿易相は、例えば現在はICE関連企業が支配するインターネット・サービス供給を民営事業として競争に曝すような限定された自由化でさえ論外だと言う。このような左派の抗議が成功を収めれば、余波は隣国にも及ぶ。隣国のFTA反対派が勢いづくであろう。

 9月15日の第7回交渉を前に、中米側は、米国が農業補助金の撤廃を拒否しているために、特定農産物への米国の補助金に見合う関税や割当による特別な補償措置を持ち出したというニュースも流れた(中米諸国、米国とのFTA交渉で農業補助金相殺を提案へ,03.9.1)。CAFTA交渉も、カンクン交渉と同様な難題を引きずっている。

農業情報研究所(WAPIC)

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