タイでも有害廃棄物の捨て場になると、日本との経済連携協定批判の動き

農業情報研究所(WAPIC)

06.12.3

   フィリピン農民グループが日本との経済連携協定により国が日本の有害廃棄物の捨て場になることを恐れていることは先日伝えたが(フィリピン 日比EPAで増えるだろう日本からの有害廃棄物の捨て場は既に完成,06,11.1;フィリピン農民 日比経済連携協定に抗議 彼らの土地が有害廃棄物投棄場になる,06.10.27)、バンコク・ポスト紙によると、タイの自由貿易協定(FTA)監視グループも、もし日本とタイの経済連携協定(FTAを含む)が発効すれば、タイが日本の電子機器・有害廃棄物の捨て場になる恐れがあると警告している。

 グループの独立研究者であるBuntoon Srethasirote氏が1日、協定は現在の30%の輸入関税を廃止するから、日本がリサイクル・チャンネルを通して大量の使用済み製品、特に電子機器をタイに送ることを可能にすると語ったという。

 Thailand 'risks being a dump site for Japan',Bangkok Post,12.2
  http://www.bangkokpost.com/021206_News/02Dec2006_news14.php

 彼の言い分は次のとおりだ。

 日本環境省の統計では、2003年に400トンちかくの使用済み電子機器部品がタイに輸出されている。この量は協定成立後には急激に増加すると予想される。タイのリサイクル技術は制約されており、すべての使用済み製品がリサイクルされることはありそうもなく、大量の製品がごみ捨て場や埋立地に投棄されることになる。

 タイ外務省は、日本との交渉で有害廃棄物の投棄の問題を深刻に受け止めておらず、問題を防ぐには現在の環境保護法で十分だと主張してきた。しかし、彼は、「タイの法律に多くの抜け穴があることは知られた事実だ。法律が使用済み電子機器や有害廃棄物の大量の流入をコントロールするのに有効だと信じるのは難しい」、「タイと日本は、先進国から途上国への有害廃棄物の移動を停止する法的拘束力のある約束であるバーゼル条約を批准していない*」と言う。

 グリーンピースの活動家も、「日本は、タイのような途上国がFTAを通して投棄場になるのを恥知らずに強制している」と協定を非難する。

 *日本は、1993年9月にバーゼル条約を批准した。しかし、アフリカ諸国をはじめとする途上国や環境グループは、1989年に採択されたこの条約が犯罪行為を禁止するというよりも、有害廃棄物の合法的取引に道を開くものだと批判してきた。そのために、1995年には、EU、OECDに加盟するすべての先進国から途上国へのあらゆる有害廃棄物の輸出を禁止する”バーゼル禁止”と呼ばれる条約修正案が82の条約締約国により採択された。しかし、この修正条約は、発効のためには締約国(168ヵ国)の4分の3の批准が必要とされており、未だに発効しておらず、日本も批准していない。彼はこのことを言っているのだろう。日本は”合法的”輸出を続けている。