農業情報研究所グローバリゼーション二国間 関係・地域協力2011 年12月6

 TPPとは「トータリー・プレフェンシャル・パートナーシップ」=「全く差別的パートナーシップ」 貿易「不自由化」協定だ 浜矩子氏

 浜矩子氏が124日付の東京新聞の「時代を読む」というコラムで、貿易「自由化」を求めてTPPTPP!と叫ぶ人を、TPPが目指すところは貿易自由化ではなく、貿易の「不自由化」だと痛烈に皮肉っている。氏は、人はTPPが例外なき貿易自由化につながるというが、それはその内側だけで関税引き下げや制度統一を進めようとするもので、WTOの無差別原則に反し、「TPPが目指すところは、例外なき貿易自由化どころか、例外なき囲い込み貿易とさえ言える」、そう考えていたら、TPPという頭文字が「トータリー・プレフェンシャル・パートナーシップ」、つまり「全く差別的パートナーシップ」の略称にみえてきたと言う。

 まったくの正論だ。ガットの創設者たちは、関税同盟結成による世界経済ブロック化が第二次世界大戦につながったと、「無差別」を戦後国際貿易体制の基本原則に据えた。従って、自由貿易協定、関税同盟などによる「差別的貿易圏」は原則的に認めず、すでに存在していたベネルックス関税同盟(1948年発足)のようなごく小規模なものに限って例外的に認めたにすぎない。ところが、「戦乱のヨーロッパ」から抜け出すために「アメリカ合衆国」にならった「ヨーロッパ合衆国」の創設を究極目標に掲げる欧州経済共同体(EEC)という大規模関税同盟が創設され、これに対抗する巨大な北米自由貿易圏が誕生するうちに、肩身の狭かったはずの地域貿易圏が、いつの間には貿易自由化の本流に踊り出るようになった。日本も10年ほど前、GGAT/WTOの下での多角的交渉を通じての貿易自由化の追求から二国間・地域協定の追求に向けて大きく舵を取り、メキシコや東南アジア諸国との「経済連携協定」を次々と結んだ。

 いまでは、それが原則的に認められないものであること、法的にはその発足がWTOの承認に服さねばならないこと、そんなことを知る人さえいなくなりつつあるのではないか。経済投合の理論は、地域協定による「貿易転換効果」(例えば、最も生産効率が高く、輸出競争力が髙い域外国から、関税撤廃がなければ輸出できなかった低効率域内国への部品調達=輸入の転換)が「貿易創出効果」に勝れば、世界経済全体の効率が低下すると教えている。しかし、いまや、経済学者と言われる人さえ、「貿易転換効果」など、あたかも知らないかのように(あるいは、本当に知らないのかもしれない)ふるまう。

 政治家も、学者も、ガット創設の歴史と経済統合の理論を一から学びなおすべきときだ。