農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2013年10月12日

マレーシア首相 TPP協定は最終決定前に議会でも議論 交渉の反民主的本質に挑戦

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉首脳会合が終わって4日が過ぎた。交渉の年内妥結の可能性や是非をめぐる論議がかまびすしい。ところが、そういう論議で当然重視されると思っていたマレーシア・ナジブ首相の発言が、少なくとも日本の政治家やマスコミの間では、未だに取り上げられない。取り上げられる気配もない。ここで注意を促さざるを得なくなった次第である。

 その発言とは、TPP首脳会合に先立つAPECCEOサミット(10月7日)対話セッションでなされたもので、「われわれはTPPをマレーシア議会に提出する必要がある」というものである。TPPについては、国家主権と国内政策決定権にかかわる問題を研究する必要がある。最終決定の前に、閣内だけでなく、議会でも論議するというのである。

 TPP to be debated in parliament, says Najib,The Star,13.10.9
 
Govt Committed To Presenting TPPA At Parliament, Says Najib,Bernama(マレーシア国営通信),13.10.7

 議会に諮るとなれば年内妥結の可能性は遠のくが、それは年内妥結のみならず、徹頭徹尾秘密主義に貫かれたTPP交渉の本質、「自由と民主主義」に反する本性(⇒ダーウィン主義のTPP 何が「力による支配ではなく」、「自由と民主主義」だ,13.3.19)への挑戦ではなかろうか。TPPの議会提出は「守秘義務」=踏みにじられた民主主義への挑戦に等しい。だからこそ、この発言を重視するのである。

 わが国政治家は、このマレーシア首相の姿勢にこそ学ぶべきである。最終合意は、必ず議会の審議を経なければならない。