農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2013年10月21日

EU−米国貿易協定 フランスはGM作物等々の輸入ルールを守る 小規模多様な農業の尊重を

   EU・米国間の環大西洋貿易投資協定交渉において、フランスは遺伝子組み換え(GM)作物、成長ホルモンを使って生産した肉、化学的に無菌化した肉、クローン動物の輸入に抗するEUのルールのいかなる変更にも反対する。フランスは、欧州委員会に与えられた交渉権限に述べられた’聖域’(red lines)が完全に考慮に入れられるように厳戒する。フランスのフォール農相がフィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューでそう語ったそうである。

 France keeps hard line on US trade talks,FT.com,13.10.20
 France sticks to ‘red lines’ on US trade talks,Financial Times,13.10.21,p.2

 農業と食品に関するフランスの立場は交渉の重大な障害となる。アメリカの強力な圧力団体はGM食品や成長ホルモンなどの問題をヨーロッパの保護主義的貿易障壁と見做し、その切り下げを望んでいる。

 しかし、フォール農相は、「これらの問題に関するアプローチと法律では米国との間に真の差異がある。公衆の論議や消費者の選択と対になったEUのルールが米国との交渉で変更できるとは想像もできない」と言う。

 彼によると、農業に対する非常に異なる考え方を認める対話が構築されねばならない。貿易は、異なるシステムの選択と構造―動物福祉や厳格な衛生基準などヨーロッパが民主的に行ったこれらの問題に関する選択を含め―を尊重するフレームワークの中でなされねばならない。将来の世界を養う能力を確保するためには、あらゆる場所での農業生産を保証する必要がある。

 農相は、米国、南米その他のはるかに大規模な生産に比べて小規模で公的補助を受けたヨーロッパの多様な農業を擁護する。世界の農業システムは、異なる地域がそれぞれ大量生産する異なる作物を供給する地域特化の構造に進化(退化)してはならない。「特化した一つの地域が大きな衛生問題や干ばつや洪水に出会えば何が起きるだろうか。大きなリスクがある。招来の世界を養う能力を確保するためには、至るところでの農業生産を保証する必要がある」。

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 わが国では、いまやフランスとは全く異なる・正反対の農業に関する考え方が喧伝されている。政府も、与党も、役人も、一部”専門家”たちも、マスコミも、今のままではどうせジリ貧だとばかり、ヨーロッパ以上に「小規模な日本の多様な農業」を全力をあげた押しつぶし、フランスがとっくの昔にやめた大規模専門的農業を作り出そうとしている。まさに「巨大」なリスクがある。