農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2014年3月16日

言論・結社の自由や労働者の権利の保障もないベトナムのTPP参加はお断り 前世銀アナリスト

 前世銀リサーチアナリストのKhai Nguyen が、労働者の保護と言論の自由に関する現状が改められないかぎり、ベトナムのTPP参加は認めるべきではないと論じている。

 ベトナムの2013年憲法第24条は、言論、報道、情報の自由の権利を保障している。集会、結社、デモンストレーションの権利も記されている。しかし、現実はまったく異なり、ベトナム国民にそんな自由はない。

 ベトナムは結社の自由と団結権保護に関する国連条約(ILO87号条約)を批准していない。5人以上が集まる集会は地方当局の許可を得なければならない。2005年に通過した法令は国家機関、国際会議場、国会前でのいかなる集会も禁止している。

 ベトナムには多くの政府認可組織(GSOs)があるが、独立非政府組織はない。宗教団体も含むすべてのGSOsは、政府に所属するか、国家と 提携しなければならない。

 労働組合については、ベトナム労働総同盟(VGCL)が唯一の国家レベルの組合である。すべての組合がVGCLとの提携を義務付けられており、その国・地方レベルの幹部は共産党員でなければならず、彼らは高給を得て会社のオーナーに尽くし、労働者ではなく党の利益を守っている。労働者はVGCLの承認があれば合法的にストライキができるが、VGCLはいかなるストライキを起こしたことも、組織したことも、支持したこともない。ベトナム政府は最近、違法なストライキに参加する労働者に企業オーナーへの損害賠償を義務付ける新たな反労働者布告を出した。

 こうした法的規制を超えた過酷な労働者搾取の形態も一般化している。強制労働や児童労働だ。児童労働と最低賃金に関する二つのILO条約の批准にもかかわらず、こうしたやり方が続いている。・・・・・・

 Nguyenは言う。ベトナムは、低賃金構造と、人口の6割を占める5300万の巨大で若く・教育を受けた労働者のおかげで、TPPから即座に利益を得ると予想される。TPPでベトナムへの外国投資が増え、原料輸出と労働集約的製品の生産から高付加価値製品への移行による経済多角化の機会を得るだろう。TPPの様々な労働保護措置は世界中における将来の自由貿易協定のモデルをなすものである。ベトナムが労働と市民の自由の大きな改革を実施するまで、TPP参加の特権を与えられるべきではない。

 Vietnam risks TPP slot on labor reality,Asia Times,14.3.6

 ところで、自民党は日本国憲法第21条に「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」と明記するそうである。労働三権を規定した第28条には、「公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる」と書き加えるそうである(「日本国憲法改正草案」)。労働者保護も後退するばかり、低賃金長時間労働は常態化している。今にベトナムとどこが違うと言われるようになるかもしれない。Nguyenさん、ついでに日本のTPP参加もお断りと言ってもらえないものでしょうか。