農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2014年4月12日

TPP日米交渉 米政府に未だ交渉権限なし 農産物では妥協しても自動車での妥協はあり得ない 

 オバマ訪日(23日)と日米首脳会談前のTPP日米交渉大筋合意を目指した甘利TPP担当相とフロマン米国通商代表の9日、10日の二日間にわたる閣僚協議が不調に終わった。 マスコミ報道によると、農産品の「重要5項目」の関税を残したい日本に対して米国が可能な限りゼロにするよう求め、大きな隔たりが残ったからだという。

 米側は大筋合意の期限はないと泰然としているが、日本は焦りに焦っているようだ。甘利TPP相は17日にもフロマン代表と再会談、24日の日米首脳会談での大筋合意への道筋をつけるために、6〜19日に訪米する方向で調整に入った。その際、牛肉輸入関税など日本の農産品関税の扱いをめぐり両国がどこまで歩み寄るかが焦点だというのが大方の見方のようだ。自民党が専ら重視しているのもこの問題だ(「国会決議順守貫け TPPで自民緊急決議」 日本農業新聞 14.4.12 1面)

 TPP:日米閣僚、難局打開へ再協議…来週ワシントンで 毎日新聞 14.4.11
 日米TPP、牛肉関税が焦点 ワシントンで再協議へ 朝日新聞 14.4.12
 経財相、来週に訪米 TPP巡り通商代表と協議 日本経済新聞 14.4.12

 しかし、本当にそれでいいのだろうか。甘利・フロマン協議における重大の対立点は農産物関税だけでなく、自動車分野でもあった。殊に米国の自動車安全基準緩和の強硬な要求が合意の大きな障害として立ちはだかっている。しかし、米国のこのような態度は、米国の国内事情からして当然のことである。オバマ政府は、この問題では農産物関税の扱い以上に譲れない立場に置かれている。

 何度も言ってきたことだが、オバマ政府は、未だ議会が専有する貿易交渉権限(TPA)を授与されていない。日本国内での多くの議論は、未だこの問題を失念しているのである。このままの状態で政府間合意に至ったとして、合意内容について議会の承認が得られず、結局は再交渉を余儀なくされるだろう。それを避けるためには、議員が代表するさまざまな利害関係団体の要求を満たすような合意でなくてはならない。

 ところで、オバマ大統領、または与党民主党の最大の支持母体の一つが自動車産業・農業・航空宇宙産業に従事する労働者を糾合する全米自動車労働組合である。その利益に沿わないような、あるいはその利益を損うような合意は絶対にあり得ない。仮に農産物では多少は譲ったとしても、自動車では譲れないのである。

 これを十分に認識していない交渉は危険である。足元をすくわれる恐れがある。仮に日本が自動車分野で手を打てば、米国も農業で多少譲る可能性がある。それに日本政府がとびつけば、オーストラリア牛肉の関税引き下げにみられたような「聖域」蚕食につながるだろう。

 この際、自動車産業に頑張ってもらわねばならない。自動車分野の交渉で、政府は一切妥協するな!と。

 関連ニュース

 Critics fight back on Pacific trade plan,FT.com.14.4.10
  Critics fight back as proposed pact still lack songressinal guarantee,Financial Times,14.4.10
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  Even as the Trans-Pacific Partnership (TPP) talks have entered their final stages over the past few months, the administration of Barack Obama, US president, has failed to secure important legislation which would make it easier to pass trade deals swiftly and with no amendments through Capitol Hill.
Without such a guarantee, known as Trade Promotion Authority, it is harder for the US to extract the make-or-break concessions from other countries, including Japan – customary at the eleventh hour – due to fears that the agreement may have to be renegotiated once it is up for congressional approval.
Much of the US opposition to TPP comes from within the liberal base of Mr Obama’s Democratic party – labour and environmental groups who fear it will offer more incentives for companies to move jobs out of the US and lower regulatory standards in key areas.
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