農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2014年5月2日

TPP日米協議は「ヤマを越えた」? 米有力議員 交渉は「確実に失敗する」、議会は承認しない

 日本のマスメディアは、 米議会の公聴会におけるフロマン通商代表の発言をTPPに関する日米協議は「重要な一線を越えた」、「重要なヤマを越えた」などと紹介している。人によっては、特にTPPによって存続が脅かされると恐れている農家は、交渉が妥結に向かって着実に前進していると悲観的に受けとめかねない報道の仕方である。

 「TPP、日米ヤマ越えた」USTR代表 日本経済新聞 14.5.2
 日米協議「重要な一線越えた」 米側、進展を強調 朝日新聞 14.5.2

 しかし、そう悲観的になることはない。これらの報道は、公聴会におけるフロマン代表の発言を伝えるのみ、TPP交渉に批判的な議員たちの発言にはまったく触れようとしていないからだ。TPPの成否を決するのは、何度も言ってきたことだが、米政府ではなく、憲法で通商交渉権限を与えられた議会にほかならない。

 マレーシア国営通信(Bernama)が中国新華社通信の報道として伝えるところによると、この公聴会で上院財務委員会の共和党トップ、Orrin Hatchは、議会が与える貿易促進権限(TPA)なしで高度な基準の協定が結べると信じない、政府の貿易アジェンダは確実に失敗すると述べたそうである。民主党トップのCharles Schumerも、貿易協定に為替操作条項(つまり円安誘導禁止)が含まれなければ、TPP協定は議会の承認を得られないだろうと警告したそうである。

 US Senators Voice Concerns Over Prospects Of TPP Trade Talks,Bernama,14.5.2
 http://www.bernama.com/bernama/v7/bm/wn/newsworld.php?id=1035175

 TPPの行方を見極めようとするなら、フロマンではない、議員の言動にこそ注意を向けねばならない。