農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2015年4月30日

安倍首相は日米主導でTPPと張り切るも、ファスト・トラック法案通過は綱渡り

  安倍首相が29日(日本時間30日未明)の米議会演説で、「米国と日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し遂げましょう」と上下両院議員に呼びかけた。

 首相米議会演説全文 「積極的平和主義」を旗印に 東京新聞 15.4.30 朝刊 7

 しかし、そう呼びかけられた議員たち、思いは複雑だっただろう。TPPを成し遂げるためには、まず議会が大統領(政府)に貿易交渉権限(TPA)を授与するファスト・トラック法案、ときに脱線もしかねないスロー・トラック法案(The Wall Street Journal)とも呼ばれる貿易促進権限法案を可決しなけれなならない。しかし、この法案の上院通過はともかく、下院通過に確信を持つ議員はまずいない、むしろ悲観的な議員の方が多そうだからである。

 現在の下院は共和党議員245人、民主党議員188人で構成される(2人欠員)。法案通過には245+188=433の半数以上(最低217)の賛成票が必要だ。ところが、4月29日付POLITICO誌によると、消息通は共和党議員のうちの75人までが、協定による選挙区の雇用喪失やオバマ大統領に対する不信からTPA反対に回る可能性があると見ている。そして、協定反対派が圧倒的多数の民主党議員のうちでTPAに賛成するのは12人から20人にとどまる。

 そうすると、賛成議員は共和党議員170人と最大20人の民主党議員を合わせても190人にしかならない。この場合、過半数にはとても届かない。仮に最大200人の共和党議員が賛成したとしても、法案通過のためには17人の民主党議員が賛成に回らねばならない。そんなことは起きそうにない。

 Obama trade bill in trouble,POLITICO,15.4.29
 http://www.politico.com/story/2015/04/barack-obama-trade-bill-in-trouble-117485.html

 こういう票読みが当たっているかどうかは知る由もないが、両首脳の泣きっ面を見る日もそう遠くないかもしれない。「攻める」ことしか知らない首相、ハチに刺されて名誉の戦死(慰安婦被害女性、安倍首相の演説見守った後「自ら滅びるだろう」 中央日報 15.4.30)