農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2015年5月8日

ドイツ人 EU-米国自由貿易協定支持がこの1年で急落 食品・自動車安全や環境への悪影響を恐れる

 米国の Pew Research Centerが行ったドイツ・米国国民を対象とする世論調査によると、TPP(環太平洋パートナーシップ)と並ぶオバマ政府の貿易アジェンダをなすEU-米国貿易投資協定(TTIP)へのドイツ国民の支持率が急落している。TTIPを”good”とする人の比率は1年前(2014年)の55%から41%に急落、”bad”とする人は25%から36%に急増した。理由は、協定が国の食品・自動車の安全性や環境に悪影響を及ぼす恐れあるからだ。ドイツ人の10人に6人がそう考えているという。

 他方、米国人の50%はTTIPを”good”としており、1年前の53%からあまり変わっていない。”bad”とする米国人も20%から21%に増えただけだ。”bad”とする人の半分は雇用が失われ、賃金が下がるのを恐れているという。

 調査(インタビュー)は、米国については今年2月26日から3月1日まで1003人の大人を対象に、ドイツについては2月24-25日に963人の大人を対象に行った。サンプリング・エラー(誤差)の範囲は、米国については+/- 3.7 %、ドイツについては+/- 4.7%という。

 Germany and the United States: Reliable Allie,Pew Research Center,15.5.7

 ところで、TPPに関する日米両国民を対象とする同種の調査はないようだ。日本の新聞社などが行う電話等による調査は新聞社の考えが反映されやすく、客観性が確保されない恐れがある。Pew Research Center、同様な調査を日米両国民を対象に行ってくれないだろうか。もっとも、TPPに関す確かな情報をほとんど与えれらていない国民に対してそれを行っても、本当のところは見えないかもしれない。ドイツ人はこの1年、TTIPについて確かなところを学んだのだろう。

   日本では西村康稔TPP担当副大臣とやら、国会議員に協定案閲覧を認めるという発言を、その舌の根も乾かぬうちに早々撤回してしまった(TPP:西村副内閣相 極秘扱い条文案「議員に開示」撤回 毎日新聞 15.5.8)。国民の知る権利は奪われたままだ。