農業情報研究所>グローバリゼーション>二国間関係・地域協力>TPP ニュース:2016年2月9日
山形県が賢明な選択 TPPの県内農業への影響額を当面試算しない
青森県、秋田県、岩手県をはじめ、全国の多くの県が国の試算に準じて農林水産生産額への影響を既に試算し、公表している。
しかし、吉村美栄子知事が8日の記者会見で、例えば米(コメ)について「輸入品との競合で価格は下落するものの、国内対策を講じるため生産量は増減しない」とした政府試算の妥当性は疑問とし、「大まかな影響は分からないこともないが、それが的を射ているのかという感じがする。TPPの影響は多方面にわたり、農業分野だけ試算するのもどうか。政府が国内対策を明確に打ち出してからの試算でもいい」と述べたということである。
<TPP>山形県は影響額試算せず 河北新報 16.2.9
賢明な選択である。農家の関心は米価がどれほど下がるかにある。国や県ではなく個々の農家にとっては、全体としての米の生産量がどうなるかよりも、「輸入品との競合で価格」がどれほど下がるかの方がはるかに重要だ。他の品目についても同様である。県がなすべきことは、「輸入品との競合で価格」はどれほど下がるのか、国内対策の効果も含めハッキリさせよと国に迫ることである。
しかし、そもそもTPPの中身もはっきりせず、それがいつ発効するか分らない、場合によっては米国議会の要求で再交渉もあり得る状況の中でそんな試算をすることに何の意味があるのかという疑問もある。参院選を睨んで打ち出されたTPP対策も、折角の試算も、すべた無駄になるかもしれない。こんな試算をする前に、こんなわけのわからぬ協定は蹴飛ばせと国会に迫るのが一層ベターな選択だろう。
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青森)農林水産物へのTPP影響、豚肉で最大21億円減 朝日新聞 16.1.21
国はコメについては「影響なし」との立場だが、県は、県外出荷の多くが業務用として流通する県産米への影響も想定した。輸入枠が設けられた約8万トンのコメが国内に流入し、価格が低下した場合、約23億円減少すると独自に試算した。
秋田)TPP影響、最大40億円 コメ「ゼロ」に疑問 朝日新聞 16.1.26
米国と豪州に最大で計7万8400トンの輸入枠を設けたコメについては、輸入枠と同じ量の国産米を政府が備蓄米として買い取るとしており、主食米の需給に影響はないと想定した。ただ、安い輸入米が市場で流通すれば、下落傾向にあるコメの価格水準が引っ張られ、さらに低下する懸念はあるという。
TPP影響、県内最大73億円と試算 品目では牛肉大きく 岩手日報 16.1.14
昨年11月に県農協グループが公表した試算(約50品目対象)は、13年の県内生産額約2832億円に対して減少額は約392億円(約13・8%減)に上るとし、大きな差が出た。県は、国と同様、国の対策によって生産量が維持されるという前提で試算したと説明。県農協は「最悪の事態」を想定したとして対策は加味していない。
県の試算は、コメや牛肉など県内で生産される国の対象11品目に、ブドウやレタスなど県内主要8品目を加えた。品目別では、コメは国と同様に減少額がゼロ=表。国は、増加する輸入量相当の国産米を備蓄米として買い入れて影響を遮断する―としており、県もそれに基づいた。