農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2015年11月12日

恐れていた以上に悪い 米共和党議員のTPP評 米批准に黒雲

   米国市民団体パブリックシチズンのTPP関連ウエブ・サイトが、8人の米議会共和党議員がTPP協定公表を受けて発表した声明の一覧を掲げている。声明の内容は何れも、思った以上に悪いというものだ。自由貿易推進派が多い共和党議員のこうした態度は、米国のTPP批准を危うくするものだ。米国が批准しなければTPPは発効しない。なのに、この国では、早々とTPP対策が論議されている。わが国政治家は、与党、野党問わず、完全に方向感覚を失っている。

 ちなみに、一覧表冒頭のデローロ議員の声明を翻訳・紹介しよう。他の声明も、趣旨は皆同じだ。

 「7年間の秘密交渉の後、この大部な協定は、我々が恐れていた以上に米国民にとって悪いようだ。その主要な問題は、端的に言えば、我々に非民主的で、人権と労働権の侵害がはびこる低賃金の国 とのビジネスを強要し、米国人の仕事を奪い、賃金を引き下げることにある。

 この協定は、ベトナムやマレーシアのような国からの危険なシーフードから消費者を守るわが国の能力を制限する。それは、安価なジェネリック薬品を市場から締め出そうとする巨大製薬会社にへつらう。その結果、医薬品を一層高価にし、医療の躍進に向けての前進を遅らせる。

 この協定には実効ある為替操作ルールがない。日本やベトナムのようなTTPパートナーによる為替操作は、既に米国人の何千もの職を奪っている。エコノミスト、C. Fred Bergstenは、米国の500万の仕事を奪う為替操作を確認している。

 この協定が公表された今、米国人は、この協定が米国人の職、賃金、家族の健康にどれほどの災厄をもたらすか、自ら知ることができる。私は、それが現実とならないようにできる限りのことをし続けるつもりだ。

 政府はこの協定が外交政策の勝利だと主張するが、これは真実にほど遠い。この協定により、我々はマレーシアの人身売買、ブルネイのLGBT(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人々への暴力、ペルーの環境破壊、ルールに従わない国での米国人の海外労働を奨励することになる」。

 農業者には悪いが消費者には結構だ。こんな声しか聞こえない日本のTPP論議、なんと貧弱なことだろう。