農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力ニュース:2015年5月2日

米国 FTAで農産物輸出は増えない 輸入が増え、小規模家族農場が消えるだけ―パブリック・シチズン

  TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に反対する米国市民団体、パブリック・シチズンが4月28日、米国農務省(USDA)はTPPによって米国の農産物輸出・農家所得が増え、一層多くの農村経済活動と雇用が生み出されると主張しているが、農務省自身のデータは、米韓自由貿易協定や北米自由貿易協定(NAFTA)など既存のFTAは米国農産物輸出の増大に貢献せず・輸入を増やし・小規模家族農業がを減らしただけであること示しいると発表した。TPPによる日本の損失はこんなものでは済まないだろう。

 Don’t Believe the Hype: Agricultural Exports Lag under Trade Deals, Belying Empty Promises Recycled for the TPP,Public Citizen,15.4.28

 1.米韓FTA後、世界全体への農産物輸出は14%の伸びたが韓国への輸出はほとんど増えていない。

 2.NAFTAの下で、農産物貿易収支は黒字から赤字に転じた。

 3.世界金融危機(2008年)後、米国の世界向け食料輸出は24%増えたが、FTA締結相手国への輸出は1%しか増えていない。

 4.米国の食料輸入の71%がFTA締結相手国からのものだが、FTA締結相手国向け米国食料輸出は35%を占めるだけである。FTA締結国への食料輸出の低迷とFTA締結国からの食料輸入の急増で、2011年(大部分の最近のFTAが発効した年)以来、FTA締結国との米国食料貿易収支は13%減った。他方、世界食料貿易収支は23%増えた。

 5.FTAの下での農産物輸入の増加と農産物貿易収支の減少で最大の打撃を受けたのは小規模家族農場、NAFTA以来消えた小規模農場の数は18万に上る。