近頃巷に流行らぬもの TTPとTTIP 米欧貿易投資協定交渉が危機的状況に

 

農業情報研究所グローバリゼーション二国間関係・地域協力TPP TTIP ニュース:2016年2月25日

 

  EUと米国の貿易投資協定(TTIP)交渉が危機に瀕している。今週ブリュッセルで行われた第12回目の交渉でも何の前進も見られなかった。米国が足を引きずっているためだ。交渉の内幕を知るベルント・ランゲ欧州議会国際貿易委員会委員長は、議題となる25の章のうち、半分以上の章について米国が明確な立場を明らかにしていない。今までに交渉されたのは専ら対立のないトピックだけ、難題はすべて先送りされてきた。例えばISDS条項、機械工学規格・基準、公共調達手続などの厳しく対立する問題は未解決のままだという。

 

  ランゲ氏によれば、時間切れが迫っている。協定文作成の期限は今年7月だ。この期限を逸すると、オバマが大統領職を離れる前に協定を締結するのは不可能になる。米国大統領選挙で事態はさらに悪化する。ますます内向きになる共和党が勝てば、彼らは新たな自由貿易協定を阻止するだろう。民主党員の多くは自由貿易に懐疑的で、投資家保護と労働者の権利の行方を懸念している。ランゲ氏は時間がない、一刻を争うと警告する。

 

  Is TTIP in crisis?,Deutsche Welle,16.2.25

 

  TTPも似たようなもの。大筋合意に達し、協定調印にまで漕ぎ着けたものの、大統領予備選では、TPPなど米国にとって災厄以外の何ものでもないと公言するトランプ氏が共和党内で優位に立っている。民主党ではTPP反対を明言するサンダース氏が善戦、クリントン候補も何らかの修正(再交渉)なしのTPPには賛成できないとしている。

 

  早々とTPPの影響を試算、対策と予算措置まで講じようとしている日本は、アベノミクスの目くらましで世間の動きが全然見えなくなっているようだ。TPPが日の目を見なかったとき、一体どんな顔をするのだろう。いまから楽しみだ。