カナダ農業省、モンサントとのGM小麦共同開発断念へ―GM食品世界制覇の野望を挫く?

農業情報研究所

04.1.16

 12日のカナダ・Portage Daily Graphicの報道によると、カナダ農業省は生産物販売の見通しが見えないなか、モンサント者と連携して開発した遺伝子組み換え(GM)小麦(除草剤抵抗性ランドアップ・レディー小麦)に関する97年以来の長期プロジェクトを断念する。

 規制当局はなおリスクと便益の評価を続けるが、農業省は、このバイテク小麦の最初の株に対する科学的期待が実現しそうもないという判断を固めたらしい。農業省のジム・ボウル氏がこの作物にはこれ以上の投資はしない、もうモンサントとのラウンドアップ・レディー小麦の開発はしないと語った。また、この決定はカナダの小麦消費者がこれを受け入れるかどうかの懸念を反映するものなのかと問われ、「そうだ、私はそう思う」と答えた。ただ、モンサントとの決定的訣別ではなく、多年をかけて開発した遺伝物質へのモンサントのアクセスは認めるという。

 モンサント社のスポークスマンは、目的は達成されたし、さらに拡張する理由もないとして、この協同の停止の影響は小さいことを強調している。この小麦の商品化の希望は棄てていないが、カナダの小麦市場を混乱させるようなことはしないと言う。

 今まで、大規模に商品化されたGM作物は、主として飼料用の大豆・トウモロコシ、搾油用のナタネ、食用中心ではないワタに限られてきた。しかし、GM小麦が大規模に栽培されれば人間の基礎食糧がGM製品になり、その栽培面積も巨大であることから、その開発と承認はバイテク企業の農業・食糧支配が確立するかどうかの分かれ目となる重要な意味をもっていた。内外の消費者の抵抗は強く、大抵の除草剤では退治できない「スーパー雑草」の発達に対する懸念も強かった。カナダ主要生産地域の小麦の販売・貿易を一手に取り仕切るカナダ小麦ボードも、顧客はこれを望んでいないとし、昨年、モンサント社に承認申請を取り下げるように要求していた。

 収益を大幅に悪化させたモンサント社の生き残りをかけた商品であるから、商品化の望みは容易に棄てないだろう。だが、カナダ農業省の決定は(といっても正式決定となるかどうかはなお不明だが)、GM作物・食品の世界制覇がなるかどうかのカギは消費者が握っていることをはっきり見せつけたように見える。

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