オーストラリアGMカノーラ大規模実験大幅縮小へ、小麦ボードが「共存実験」を主張

農業情報研究所

04.4.1

 モンサント社とバイエル社は、オーストラリア・ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州による遺伝子組み換え(GM)カノーラ大規模実験の承認を得るのに失敗した。NSWは、3,500haで栽培し、収穫の実験的販売も行うという両社の共同提案を受け入れるオーストラリア唯一の州となると見られていた。この決定は、両社のオーストラリアでの事業拡大の目論見を大きく狂わせることになる。モンサントは、「一番損をするのはNSWの農民と環境だ」と州政府の決定を批難、「非常な失望」を表明した。

 州政府の決定は、オーストラリアの小麦輸出に独占的にかかわるオーストラリア小麦ボード(AWB)が3月29日、商業的規模の実験への反対を公式に表明したことを受けたものだ。だが、AWBもGM作物商用栽培を完全に放棄したわけではない。それは、「穀物産業の前進を確保する重要なステップ」としての「GMカノーラの共存実験支持を再確認」している(⇒AWB Media Release:GM Canola,3.29)。GMカノーラ商用栽培がオーストラリア小麦の販売に悪影響を与える可能性を考慮、GMカノーラの直近の商用栽培は支持しないというだけだ。中東や日本はあり得るGM汚染を恐れているから、GMカノーラと非GMカノーラを分離し、顧客に品質を保証できる適切な供給チェーンを開発し、試験し、立証することが必要だ、産業により開発され、適切な計画案に従う「共存実験」を含むプログラムが不可欠だと言う。また、実験で生産されたカノーラは輸出されることなく、国内で使用されるか、さらなる研究のために使われるという条件で実験を支持すると言う。

 従って、州政府は、420haでの三つの小規模実験を認めた。大幅に縮小されたとはいえ、他の州に比べればはるかに大規模な実験だ。マクドナル州農相は、用心深く、段階的に進むが、この技術の潜在能力は否定しないと言っている。決定は、商用栽培開始の時期を遅らせるだけの結果となるかもしれない。

 関連ニュース
 Export trade fear shrinks GM crop trials,smh.com,4.2

 関連情報
 オーストラリア、GM食用作物導入は1州だけか?,04.3.31

農業情報研究所

グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境