インド 干ばつ・塩害耐性GM米の開発プロジェクト

農業情報研究所

05.5.14

 インドが干ばつ・塩害・低温に耐えるイネ品種の開発に乗り出すようだ。The Hindu Business Onlineの先月27日付けの報道(Cornell varsity, DRR working on drought, salt-resistant rice,The Hindu Business,6.27)によると、ハイデラバードに本拠を置くイネ研究所(DRR)が、米国のコーネル大学が開発した同様な特質を持つTrehlose Gene Construct (TRC)と呼ばれる遺伝子構成を輸入、商業栽培イネ品種に組み込むプロジェクトを進めている。このプロジェクトは、インド農業研究委員会(ICAR)が承認、バイテク局(DBT)による輸入承認も得た。

 この遺伝子構成はニューデリーの国家植物遺伝学研究所(NBPGR)を通して輸入する。DPRの科学者が、コーネル大学で訓練を受けている最中である。この遺伝子構成がインドで普及しているイネで同様な能力を持つことが証明されれば、インドでは850万haが塩害の影響を受けているから、利益は巨大という。沿岸地域の塩害は大問題であり、大部分の沿岸州では海水の浸入で塩害が起きている。内陸部でも、排水に起因する塩害が起きている。現在、塩害耐性の程度が様々なおよそ20の品種が沿岸塩害地域で栽培されており、科学者はその一部にTRCを組み込み、塩害・干ばつ・低温への耐性がインドの条件で十分に発揮されるかどうか検証しようとしている。  

 DPRは既に、改変遺伝物質の監視・評価・試験のための施設を構内に作ったという。

 インドでは食用遺伝子組み換え(GM)作物の導入への抵抗が強く、これまでに商業栽培が許されたGM作物はワタに限られる。ニューデリーの「遺伝子キャンペーン」は、インドが米の原産地と多様性の主要中心地をなすがために、世界の人口の半分近くの基礎食料である米の不足を理由にGM米栽培を導入してはならないと主張してきた。それは、「遺伝子の多様性は、どこか にある作物が病気や土壌・自然環境の変化で脆弱になったとき、他の品種を作り出すために不可欠である。GM稲が一定の遺伝子の働きを奪ったり、他の遺伝子の正常な働きを変えたりすることで稲の自然の遺伝子プールを損傷すれば、世界の米食地域の食糧安全保障に恐るべき影響を与える」と、GMイネの導入が将来の食糧安全保障の脅威となる可能性さえ指摘しているインドはGM米を生産してはならない―ヒンドゥ紙掲載意見,04.4.5)。

 また、昨年の農業バイオテクノロジー応用に関する政府特別委員会の報告も、遺伝子組み換えは、バスマティ米、大豆、ダージリン・ティーなど、国際貿易に影響を与える作物や商品では行うべきでない、イネのような主要作物の遺伝的多様性の第一級または第二級の中心なす国内の諸地域は、「農業生物多様性の聖域」として、子孫のために保存すべきだと勧告している(インド特別委員会、農業バイテク利用で勧告,04.6.3)。

 それにもかかわらず、農業科学・技術関係者は、GM技術の魅力には抗し難いようだ。インドがGM食用作物の商業栽培に踏み切る可能性は決して排除できない。