アルゼンチン シンジェンタのGMトウモロコシ承認 農業多角化と輪作の奨励が狙い

農業情報研究所

05.8.29

 アルゼンチン政府がシンジェンタ社の除草剤(グリホサート)耐性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ・GA21を承認した。この承認は、ラウンドアップ・レディー(RR)除草剤耐性GM大豆によるモンサント社のアルゼンチン農業支配に抵抗、農業の多角化と輪作の促進による土壌劣化防止を狙ったものと見られる(Argentina OKs new GMO corn developed by Syngenta,Reuters via Yahoo!,8.22;http://yahoo.reuters.com/financeQuoteCompanyNewsArticle.jhtml?duid=mtfh42368_2005-08-22_23-20-25_n22624097_newsml)。

 アルゼンチンは、1996年にRR大豆を承認した。2004/05年には1440万haにRR大豆が栽培された。トウモロコシ栽培面積は332万haほどにとどまっている。今シーズンには、さらに300万haから310万haに減ると予想される。GMトウモロコシよりもRR大豆のほうが安価で、栽培も容易だからだという。

 RR大豆の普及は、雑草防除のための耕起を省くことでアルゼンチン農業の宿弊である土壌浸食の抑制に貢献してきた。しかし、不耕起によるRR大豆の連作による土壌の固化は根の発達を遅らせ、水の浸透と土壌の保水力を減らし、収量の天候による変動を大きくし、栄養分の貯蔵と吸い上げの効率を減らすなどの別の問題を引き起こすと指摘されてきた(有機農業は未来の農業たり得るか―ネイチャー誌レポート,04.4.23の「農業情報研究所:注」)。

 ロイターのこの報道によると、新たなGMトウモロコシを承認した政府は、これにより、土壌養分の補給に不可欠なトウモロコシ栽培を農民に奨励しようとしているのだという。カンポス農相は、「バイテクを通して大豆のコストと同様なコストが実現できれば、持続可能な作物輪作を生み出すことになる」と語っている。

 アナリストは、トウモロコシ栽培面積の60%が害虫抵抗性のGMトウモロコシで占められている現状からして、害虫抵抗性と除草剤耐性の両方の形質を与えるモンサントのGMトウモロコシ品種が大きな影響を持つと期待しているが、GM大豆の特許使用料をめぐる政府とモンサントの確執が続くなか(モンサント、南米のGM大豆の特許使用料徴収で大苦戦,05.8.4)、この品種の承認はペンディング状態にあり、承認の見通しが立たないという。そこでシンジェンタの除草剤耐性GMトウモロコシの承認となったようだ。

 ただし、相変わらず耕起なしのGMトウモロコシーGM大豆の輪作だけで土壌劣化がどこまで防げるのかははっきりしない。それは、費用節約的な問題解決策の一つではあっても、根本的な解決策にはならない。