インド 新たに16種のGMワタを承認 農民は救われるのか

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.8

 インド環境森林省の下で働く遺伝子工学・承認委員会(GEAC) が、北部・中部インドで栽培される新たな7社の16の害虫抵抗性遺伝子組み換え(GM)ワタ(ボルガード・ハイブリッド)を承認した。これで、北部での栽培承認ボルガード・ハイブリッド・ワタは6種(モンサントとの50-50%販売合弁会社・Mahyco Monsanto Biotech社の製品)から12種に、中部での栽培承認ボルガード・ハイブリッド・ワタは12種(同)から22種に増える。これら地域の農民は、6月に始まる2006年栽培シーズンには計36種のボルガード・ハイブリッド・ワタを栽培できることになった。

 16 Bollgard cotton hybrids cleared,Hindu,5.6
 http://www.hindu.com/2006/05/06/stories/2006050601851300.htm

 この承認は、国立農業経済・政策研究センターの上級科学者が、GMワタは他の国に比べて法外に高い価格と特許使用料の徴収で農民を自殺にまで追い込んでいるとして、政府の承認拡大政策の見直しを要求した直後になされた(インド国立研究機関研究者 高価なGM作物が農民を自殺に追い込むと政府を批判,06.4.12)。GEACは何を考えているのだろうか。

 インドでは、1995年以来、2万の農民が借金苦で自殺に追い込まれている。それは高いGM種子のせいだけではないだろう。米国等からの補助金付の安価な農産物の流入を許す政府の輸入自由化政策が根本的原因と指摘する研究者もいる。それはまた、貿易自由化を強要する国際社会(WTO)のせいでもある。

 Farmers, caught in the quicksand of credit,Hindu Business,4.21
 http://www.indiapress.org/gen/news.php/Business_Line/400x60/0

 しかし、輸入自由化による価格下落が生産費を償うことを不可能にしているならば、種子の価格はなおさら引き下げる必要がある。政府はGM種子導入が高い自殺率の原因ではないとし、貸付を増やしているが、”魔法の種子”の宣伝文句に誘われて法外に高価な種子の購入で一層の借金を背負い込む農民が現れるだろう。実際、自殺農民は減らないどころか、ますます増える傾向にある。新たな大量のGM種子承認は、この傾向を一層強める恐れがある。 偽物種子を売って農民から金を巻き上げる悪徳種子商さえいる()。自家採種による在来種子の利用の普及こそ、インド農民を救う最善の方法ではないかと思われる。

 関連情報
 インド政府委員会 モンサントが技術独占 法外なBtワタ種子特許料が農民に不当なコスト,06.4.17