BASF Plant Science 干ばつ耐性GM小麦を豪分子植物育種研究センターと共同開発

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.15

  ドイツの巨大化学企業・BASFが6月8日、モンサント、シンジェンタと並び遺伝子組み換え(GM)作物の開発で世界をリードするその農業部門・BASF Plant Scienceとオーストラリア分子植物育種協同研究センター(MPBCRC)との協力関係を拡充すると発表した。今後7年間に2800万ドルを投資、オーストラリアでの干ばつ耐性や真菌病抵抗性のGM小麦を共同開発するという。

 BASF:BASF Plant Science and Australian research centre Molecular Plant Breeding CRC strengthen cooperation to develop genetically optimized wheat,06.6.8
 http://corporate.basf.com/en/presse/mitteilungen/pm.htm?pmid=2313&id=V00-gyjtL8nFvbcp3lO

 共同研究プログラムの一環として、BASF Plant Scienceは収量増加・干ばつ耐性・真菌病抵抗性の候補遺伝子の大規模なコレクションを利用可能にする。MPBCRCは、典型的な農業条件の下で高度に有効な遺伝子組み換えのための専門知識と特許を持つ技術を提供する。

 BASFによると、小麦は、世界で栽培されるトウモロコシに次ぐ穀物であるが、長期化する干ばつが、オーストラリアなどの乾燥地域のみならず、ヨーロッパでも二桁 (%で)の収量損失を引き起こしている。また、真菌病も収量を大きく減少させている。真菌病に抵抗性をもつGM小麦は農民の一層有効な作物保護に役立つだろうという。

 オーストラリアの2002年の小麦収量は、100年来と言われる干ばつで半減した。その後も、これほど厳しくはないとしても、ほとんど連年の干ばつに見舞われている。今年も多くの農業者が作付できず、牧草も枯れ始めている。こうした傾向は、今後ますます強まるだろう。

 最近、クウィーンズ技術大学の研究者は、地球温暖化は、今後30年の間、小麦部門に少なくとも年間10億ドルの損害をもたらすだろうと警告した。気温上昇と降水の減少は、生育期間の短縮と新たな害虫・病気のために、収量減少を引き起こすという。

 Heat on wheat: $1b loss feared,smh.com,6.8

  言われるようなGM小麦開発は、もし成功すれば確かに農業者と農村、そして国の経済にも大きく貢献するだろう。

 しかし、世界の主要食料穀物である小麦については、市場を失うことを恐れるオーストラリア農業者が簡単にGM品種を受け入れるとは考えられない。オーストラリアに今までに導入されGM作物はワタだけであり、食用作物については、GMナタネの商業栽培さえ実現していない。まして、海外市場規模が格段に大きい小麦となれば、導入のメドはまったく立たない。米国、カナダでさえ、モンサントが開発を終えたGM小麦 が海外市場喪失を恐れる農業者に拒絶されている。商業栽培は無期限延期の様相だ。

 BASFは、投資回収の見込みをどう立てたのだろうか。新品種が完成するであろう7年後には、GM食品に対する世界の抵抗は終わっていると予想したのだろうか。しかし、確実な予想は神様以外、誰もできない。

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